
弁護士のアドバイスをヒントに、問題解決の一歩を。
令和6年(2024年)7月1日号
区内在住の弁護士により結成されている「渋谷法曹会」の皆さんに、同会の成り立ちや、普段と災害時における区民からの法律相談(区民相談)についてお話を伺いました。





区民相談とは
区が実施している相談事業です。専門相談には、渋谷法曹会が行う法律・交通事故相談のほか、税務相談・不動産相談・司法書士相談・行政書士相談・社会保険相談・行政相談・人権擁護相談があります。

区内在住の弁護士がつながり、学び合い、地域に貢献
最初に、皆さんの自己紹介をお願いします。
明日山:東京弁護士会(注1)に所属しています。弁護士歴は約52年、渋谷法曹会には約30年在籍しています。専門は相続や離婚、不動産などで、現在は法律相談を主にしています。
飯塚:東京弁護士会に所属しており、弁護士歴は44年ほどです。仕事としては企業法務が主ですが、個人として相続問題を扱うこともあります。
木之瀬:第二東京弁護士会に所属しています。弁護士歴は約30年です。仕事は顧問先の業務が中心ですが、個人の相続、不動産、相隣(そうりん)関係(注2)も扱っています。
在間:第二東京弁護士会に所属しており、弁護士としては15年ほどのキャリアになります。区内の法律事務所で、個人・中小企業を対象に、困り事の解決をお手伝いしています。また、東日本大震災後に5年ほど岩手県陸前高田市の公設事務所で、被災者の生活再建支援をしていました。現在も各地での被災支援活動をライフワークにしています。
松居:東京弁護士会に所属しています。弁護士歴は今年でちょうど30年になります。企業法務、学校法人法務、不動産や相続案件を多く扱っています。
(注1)東京都には東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会の3つの弁護士会がある。
(注2)隣近所との間に起こる問題のこと。たとえば境界にある木の伐採や、袋地(ほかの土地に囲まれ、公道とは接していない場所)の通行などが挙げられる。
渋谷法曹会とは、どのような組織なのですか?
松居:渋谷法曹会は、区内在住の弁護士が相互の親睦と品位の向上を図るとともに、社会福祉に寄与することを目的として活動する組織です。戦後、都内各区で法曹会結成の動きがある中で、当時の区内在住の弁護士によって結成され、75年以上の歴史があります。加入は任意で、現在の会員数は64人です。年齢は30代から90代までと幅広く、区内在住歴もさまざまですが、渋谷区を思う気持ちは一致しており、和気あいあいと活動を続けています。
渋谷法曹会の活動内容を教えてください。
飯塚:主な活動は、区役所で週2回開催されている区民相談(法律・交通事故相談。以下、区民相談)です。また、会員は区の審議会委員や監査委員、人権擁護委員なども務めています。
明日山:近年、身近な法律が次々と改正されているため、区民相談の際に適切なアドバイスを提供できるよう、会員向けの勉強会や小冊子の制作・配布なども行なっています。地域の役に立つだけでなく、勉強会や親睦会を通して仲間とつながることで、多角的な学びを得て、弁護士として成長できる。このような点も、渋谷法曹会で活動するメリットだと考えています。
区民相談で法律・交通事故相談を実施。災害時の法律問題にも対応
区民相談とは、どのようなものなのでしょうか?
木之瀬:区内在住・在勤者に向けた法律・交通事故相談です。区役所2階の相談室にて対面での相談を行うほか、電話相談も行なっています。費用は無料ですが、1枠40分と時間が限られていますので、あらかじめ関連資料や事実関係のメモなどを持ってきていただくと、スムーズに進められると思います。
区民相談では、どのような相談が寄せられていますか?
明日山:相続関係、離婚、相隣関係、土地・家屋など、日常生活で生じる法律問題の相談がよく寄せられています。最も多いのは相続の分配や手続き、遺言の書き方といった相続関係です。続いて離婚、相隣関係となっています。土地・家屋は賃貸借契約や土地購入の困り事の相談に来られる人が多いです。
災害時にも区民相談の場(注3)が設けられると伺いました。災害時にはどのような法律相談を受けることが多いのでしょうか?
在間:災害の種類や地域によって多種多様ではありますが、非常に多いのは被災ローンの相談です。自宅は壊れてしまったけれども、残っている住宅ローンのために生活再建ができないというもので、「二重ローン」とも呼ばれています。また、「家の名義が先代のままのため、相続人全員の同意がないと取り壊しをしてもらえない」「支援制度が複雑で自分にはどれが当てはまるのか分からない」などの相談も多く寄せられます。災害時にはこのような問題が複雑に絡み合い、一人では問題の核心に気付きにくい傾向がありますので、被災された皆さんのお話をじっくりと聞き、一緒に問題を解き明かしていくことを心掛けています。「一歩踏み出そうという気持ちになった」と言っていただけるとうれしいですね。
(注3)区と渋谷法曹会は、平成16(2004)年に「災害時における特別法律相談に関する協定」を締結している。
さまざまな選択肢を示し、相談者の気持ちを前向きに
区民相談を受ける上でのやりがいや、心掛けていることを教えてください。
松居:法律相談に来られる人の多くは、何をどうしたらいいのか分からないという状態で、お困りになっています。私たち法律家がさまざまな選択肢を示すことで、相談者の気持ちが前向きになったり、本業に専念できるようになったりすることにやりがいを感じます。
木之瀬:相談後に「ありがとうございました」と言っていただけること、相談者に少しでも元気になって帰っていただけることがやりがいです。個人的な感情など、法的な解決が難しい問題もありますが、納得していただけるように丁寧に説明することを心掛けています。
飯塚:区民相談は適切なアドバイスの提供を目的としており、私たちは相談を案件として引き受けることはできません。問題解決のための方向性をご自身で見つけていただけるよう、可能な限りアドバイスさせていただきます。
最後に、区民の皆さんへメッセージをお願いします。
明日山:都内では、各弁護士会、法テラス(注4)、日本女性法律家協会などが法律相談を行なっていますが、相談形式や利用条件はさまざまです。渋谷区の区民相談は無料ですので、ぜひ、気軽にお越しいただければと思います。
飯塚:どんな問題でも相談いただければ、何らかの解決方法が見つかる可能性がありますので、諦めずに相談していただきたいです。
木之瀬:どうぞ緊張せず、お気軽に区民相談へお越しください。法律に関することなのか分からない問題でも、相談は可能です。問題解決に向けた最初の一歩としてご利用いただければと思います。
松居:何か困った時に、このような法律相談の窓口があることを区民の皆さんに知っていただきたいです。また、渋谷法曹会では近年、個人情報保護などの観点から区内在住の弁護士の把握が難しく、新規加入の呼び掛けがなかなかできない状況が続いています。しぶや区ニュースをきっかけに渋谷法曹会の存在を知った区内在住の弁護士の皆さんには、ぜひ、私たちと一緒に活動していただきたいと思いますので、ご連絡をお待ちしています。
在間:法律問題は、よく虫歯治療に例えられます。早めに対処すれば問題解決しやすいですが、放っておくと大変な手当てが必要になってしまうものです。現在、相談を迷っているようでしたら、お早めに区民相談をご利用ください。同じ区民である弁護士が担当することで、法律相談を身近に感じ、頼りにしていただけたらうれしいです。
(注4)国によって設立された、法的な問題解決のための総合案内所のこと。正式名称は日本司法支援センター。
「渋谷のラジオ」で放送中!
明日山さん、飯塚さん、木之瀬さん、在間さん、松居さんへのインタビューは7月2日・9日に「渋谷の星」で放送します。
渋谷のラジオ 87.6MHz(外部サイト)
6年度区民相談(法律・交通事故相談)
相談日 | 定員 | 相談枠 | 相談員 |
---|---|---|---|
毎週月曜日・木曜日(月曜日が祝日の場合、翌火曜日に実施) | 月曜日:10人(各相談枠2人) | (1)13時〜13時40分(2)13時45分〜14時25分(3)14時30分〜15時10分(4)15時25分〜16時5分(5)16時10分〜16時50分 | 弁護士 |
相談内容(秘密厳守)
- 法律相談(相続関係、離婚、土地、家屋、相隣関係、金銭問題など、法律に関すること)
- 交通事故相談(交通事故の示談、調停、訴訟、保険金請求に関すること)
利用対象者
区内在住・在勤の人
利用料
無料
事前予約方法
渋谷区公式LINE、電話(先着順)(注)毎月第3火曜日9時から翌月1か月分が予約できます。(注)相談は一人につき、年度内(4月から翌3月までの間)に3回までです。
渋谷区公式LINE(外部サイト)
問い合わせ
広報コミュニケーション課広聴相談係 電話:03-3463-1290 FAX:03-5458-4920