ちがいをちからに変える街。渋谷区

マイポータル
  1. TOP
  2. 区政情報
  3. しぶや区ニュース
  4. 令和7年(2025年)1月1日号
  5. 現在のページ

目標に向かって体を動かすことで、人も街も元気に。

令和7年(2025年)1月1日号

PDF

PDFファイルをご覧になる方法は、PDFファイルをご覧になるにはのページを参照してください。

2025年新春。渋谷区出身のアーティスティックスイミングのメダリストで、JOC 常務理事を務める小谷実可子さんを迎えて、スポーツの力とクリーン活動について語り合いました。

小谷さん「オリンピアンの発信力をさまざまな地域活動に生かしていきたいです。マスターズでは4つの金メダルを目指して頑張ります!」
アーティスティックスイミング メダリスト・JOC常務理事 小谷実可子(こたにみかこ)さん

昭和41(1966)年生まれ、渋谷区出身。幼少期から才能を発揮し、高校時代はアーティスティックスイミング(旧シンクロナイズドスイミング)留学で単身アメリカに渡る。
オリンピックでは、日本代表としてソウル1988大会で初の女性旗手を務め、ソロとデュエットでそれぞれ銅メダルを獲得。「日本シンクロの女王」に君臨した後、プール外に活動の幅を広げるために休養し、その間に長野1998大会の招致に携わる。バルセロナ1992大会の日本代表となり、大会後に現役を引退。国連総会に民間人として初めて出席した経験を持ち、オリンピック・教育関連の要職を数々務める。世界水泳選手権のリポーターや東京2020大会の招致アンバサダーなど国際的に活動する一方、自身がコーチを務めるクラブではアーティスティックスイミングの魅力を伝承している。

長谷部区長「区の施設を活用しながら、子どもたちや地域の皆さんがスポーツに親しめる機会を増やしていきたいと思います。」
渋谷区長 長谷部 健(はせべ けん)

長谷部:あけましておめでとうございます。
小谷:あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
長谷部:2024年は小谷さんにとって、どのような1年でしたか?
小谷:パリ2024オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、パリ2024大会)ではオリンピック・ムーブメント(注1)を感じました。また、私自身は世界マスターズ水泳選手権(以下、マスターズ)2024ドーハ大会で初のミックスデュエット(注2)に挑戦し、金メダルを獲得できました。スポーツの楽しさや素晴らしさ、応援の力を改めて感じた、とても幸せな1年でしたね。
長谷部:金メダル獲得、おめでとうございます。災害から始まった大変な年ではありましたが、スポーツの力を感じることができた1年でしたね。パリ2024大会では、区が応援しているフェンシングや車いすラグビー、パラバドミントン、ボッチャがメダルを獲得しました。区民の皆さんから応援やお祝いの言葉をたくさんいただき、東京2020大会のレガシーを感じられて、とてもうれしかったです。
(注1)フェアプレーの精神と友情・連帯を大切にしながら平和な社会を築き、人類の調和の取れた進歩を導くこと(JOC公式ホームページより引用)。
(注2)男女ペアで演技をするアーティスティックスイミングの競技種目の一つ。

小谷さんは神宮前小学校在学時にアーティスティックスイミング(旧シンクロナイズドスイミング、以下AS)を始められて、ソウル1988大会では銅メダルを獲得するなど、第一線で活躍されてきました。

長谷部:私たち世代は、シンクロといえば小谷さんです。神宮前小学校の先輩でもありますし、プールでも友達とよくシンクロのまねをしていました(笑)。見た目以上に過酷な競技だと思いますが、どのようなところに魅力を感じていますか?
小谷:水、チームメート、観客の“一体感”があるところに魅力を感じています。演技中は息を止めているため苦しいですが、技が決まってパッと顔を出した瞬間に拍手喝采を浴びると、苦しさが吹き飛びますね。
長谷部:ソウル1988大会で銅メダルを獲得された時は、どのようなお気持ちでしたか?
小谷:うれしかったですが、想定通りではありました。世界の誰にも負けないくらい練習していたので、「絶対にメダルが獲れる!」という確信があったんです。同じように限界まで練習した、引退直前のバルセロナ1992大会では補欠で泳ぐことはできなかったのですが、改めて振り返ってみると、100%の自信がなかったことに気付きました。オリンピックには喜びも厳しさも含めて、いろいろなことを教えてもらいました。
長谷部:東京2020大会ではスポーツディレクター(注3)を務められました。コロナ禍を乗り越えての開催という大変な経験をされましたね。
小谷:とても苦しい日々でしたが、選手たちが一生を懸けてきた夢の舞台をつくることが自分の使命だと信じ、徹夜の交渉を重ねました。大会中もさまざまな困難がありましたが、アスリートの頑張りは人々を笑顔にするんだと感じられる場面がたくさんありましたね。今でも海外に行くたびに「日本ありがとう!」「応援していたよ。素晴らしかった!」と言っていただけるんです。そうした東京2020大会への感謝と評価を、これからもっと伝えていきたいですし、皆さんの誇りにしていただきたいと思っています。
(注3)国際競技連盟と連携し、競技の安全、円滑な運営を指揮するリーダー。

令和6(2024)年3月には渋谷区と公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)との間で「パートナー都市協定」が締結されました。

長谷部:東京2020大会のホストシティ(開催都市)である渋谷区は、部活動の地域移行を積極的に進める中で、フェンシングやボッチャといったオリンピック・パラリンピック種目のクラブを発足させ、子どもたちの可能性を応援してきました。今後20年以上にわたって区立の小中学校の建て替えを進めていく中で、温水プールや体育館などのスポーツ施設も充実させていく予定です。スポーツ施設を活用しながら、子どもたちや地域の皆さんがスポーツに親しめる機会を増やしていきたいと考えています。
小谷:JOCのパートナー都市の中でも若者の憧れの街である渋谷区にはぜひ、ロールモデルになっていただきたいですし、それが自分の地元であることをとても誇らしく思います。NPO法人日本オリンピアンズ協会(OAJ)(注4)会長としては、国内に2,000人以上いるオリンピアンの発信力を地域の教育活動やスポーツ活動に生かしていきたいと考えています。私自身も、長年コーチとして子どもたちと関わっていますが、どんなスポーツも、まずは楽しんで取り組める環境づくりが必要だと感じています。特にASは「厳しい」「きつい」というイメージがあるのですが、私がマスターズに挑戦するようになると、「楽しそう!」「子どもに習わせてみたい」という声が多く聞かれるようになって、とてもうれしいです。
長谷部:マスターズに挑戦しようと思われたきっかけは何かありますか?
小谷:東京2020大会が終わって燃え尽きてしまった時に、新しい目標が欲しいと思ったことがきっかけです。最初は仲間たちとマスターズ2023九州大会を盛り上げられたらと考えていましたが、恩師が「覚悟を持って金メダルを目指しなさい!」とおっしゃって(笑)。練習を始めると、現役時代の何倍も難しい技ができるようになり、結果としてソロ、デュエット、チームの3種目で金メダルを獲得できました。それまで、50歳は人生の折り返し地点だと思っていたのですが、新たな人生のスタートだということに気が付きました。
長谷部:30年ぶりの競技復帰での金メダル、本当に素晴らしいです!日々の練習や食事で心掛けていることはありますか?
小谷:前日の疲れを翌日に残さないように、入念なストレッチは欠かせません。80歳までメダルを獲り続けたいので、日々のメンテナンスは大事にしていきたいですね。
(注4)日本のオリンピアン相互の理解と親睦を図り、オリンピック・ムーブメントを推進し、スポーツを通じた世界平和と国際的友好親善に貢献するとともに、国内におけるスポーツの振興に寄与することを目的として設立された団体。

小谷さんは、令和6(2024)年10月に区を安全安心な街にする活動「渋谷グッドマナープロジェクト(注5)」のアンバサダーに就任されました。どのような思いで活動されていますか?

小谷:東京2020大会を通じて、オリンピックは環境美化を含め、社会を変えられる大きなイベントだと実感し、閉幕後にビーチクリーン活動を始めました。その後、それを知った友人に誘われて、渋谷センター街のごみ拾いにも参加するようになりました。最初はごみの量に驚きましたが、コツコツ拾えば帰る時には確実にきれいになりますし、街がきれいになれば、ごみを捨てる人も自然と少なくなると思うので、今後もオリンピアンとしての発信力を生かして仲間を増やしていきたいと思います。
長谷部:一度ごみ拾いに参加すると、自然とごみを捨てられなくなりますよね。私が設立に携わったごみ拾いボランティアのNPO法人green bird(グリーンバード)も、立ち上げてから20年以上になりますが、こうした活動が渋谷の街からどんどん広がっていくといいなと思います。
(注5)さまざまな人、企業、団体などと連携し、区内における路上飲酒・喫煙やごみのポイ捨てなどの社会課題解決に向けた取り組み。

最後に、区民の皆さんへのメッセージと2025年の抱負をお願いします。

小谷:今年はマスターズ2025シンガポール大会が開催されるので、九州大会を超える4つの金メダルを目指して頑張ります!ぜひ、区民の皆さんにも楽しんで取り組めることを見つけ、自分磨きをしながら、いくつになってもキラキラ輝いていただきたいです。大人たちが挑戦する姿は子どもたちにもきっといい刺激になると思います。
長谷部:本日は小谷さんにたくさんの元気をいただきました!私自身、40歳から体を整えるために水泳やランニングを習慣にしていますが、さらにアクセルを踏んで、運動の回数を増やしていこうと思います。区としても、日々さまざまな形でスポーツに関わっている皆さんを応援し、健康増進への取り組みをより充実させていきたいです。
小谷:世代やレベルにかかわらず、それぞれの目標に向かって楽しく体を動かすことで、街全体が元気に豊かになっていくと思います。皆さん、一緒に頑張りましょう!

「渋谷のラジオ」で放送中!

小谷実可子さんへのインタビューは1月7日・14日に「渋谷の星」で放送します。
渋谷のラジオ87.6MHz(外部サイト)

小谷さんがメダルを手の上に並べ、メダルを首からさげている写真
小谷さんが獲得した、マスターズ2023九州大会での金メダル3つ(左)と、マスターズ2024ドーハ大会の金メダル(右)。奥にはソウル1988オリンピックでの2つの銅メダル。