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自らの体験を生かし、パラスポーツの魅力を伝える。

令和6年(2024年)8月15日号

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渋谷区学びとスポーツ課パラスポーツ推進係に勤務しながら、シッティングバレーボールを続ける小方心緒吏さんに、パラスポーツの魅力について伺いました。

小方心緒吏(おがたしおり)さん「実際に競技を体験してみることでパラスポーツの魅力を知ってほしいです。」
渋谷区学びとスポーツ課パラスポーツ推進係、シッティングバレーボール元日本代表 小方心緒吏(おがたしおり)さん

パラスポーツ シッティングバレーボールとは

下肢などに障がいがある選手が座ってプレーするバレーボールです。コートサイズなどの違いはあるものの、基本的な競技ルールは一般のバレーボールとほとんど同じです。でん部を床につけたまま競技を行い、スピード感あふれるラリーやコンビネーションを駆使した戦略的な戦い方が魅力のパラスポーツです。

座ってサーブを打つ体制をとっているイラスト

シッティングバレーボールとの出会い

シッティングバレーボールに出会ったきっかけを教えてください。

小方:小学5年生からバレーボールを始めたものの、中学3年生の時に右大腿骨肉腫を患い、飛んだり走ったりすることができなくなりました。入院中のとても落ち込んでいた時に、母の友人がシッティングバレーボールを勧めてくれたのですが、当時は「シッティングバレーボールはリハビリ目的でやる競技」という印象を持っていたので、あまり興味が湧きませんでした。

そこからどのようにして競技を始めることになったのでしょうか。

小方:母からも何度も勧められて、「そんなに勧めてくれるなら一度だけ」と約束して、高校1年生の秋に練習会場へ見学に行きました。義足が無造作に床に転がっている、これまで見たことのなかった光景に驚きましたが、それ以上に、プレー中の選手たちの動きが想像していたよりも素早くて圧倒されました。実際にやってみると、思っていたよりも自分がうまく動けず悔しかったですね。シッティングバレーボールには、私が求めていたバレーボールのスピード感やボールをつなげていく楽しさがあり、「この楽しさをもっと味わいたい」「もっと上手になりたい」という気持ちが込み上げてきて、本格的に競技を始めることにしました。

バレーボールとシッティングバレーボールの違いを教えてください。

小方:シッティングバレーボールはバレーボールよりもコートが小さく、ネットも低いのですが、座ってプレーすること以外はほとんど同じルールです。バレーボールは走ってボールを追いかけることができますが、シッティングバレーボールではそれができないので、より繊細なボールコントロールが必要な競技だと思います。

選手生活と家事や育児を両立した日々

日本代表として、これまでパラリンピックに3回出場(北京2008大会、ロンドン2012大会、東京2020大会)されましたが、直近の東京2020大会にはどのような思い出がありますか。

小方:当時はコロナ禍だったため、自分が感染してしまったらチームが試合に出られなくなってしまう怖さと共に日々を過ごしていました。大会は無観客試合となりましたが、ボランティアの皆さんをはじめ、周りの人たちがとても盛り上げてくださったので、楽しんでプレーすることができました。東京2020大会を通して、シッティングバレーボールがどのような競技なのか、これまで以上にたくさんの人に知っていただけたと思うので、これからは実際に競技を体験してもらいたいですね。国内大会では、健常者も障がい者も同じコートでプレーすることができ、これはシッティングバレーボールの特徴であり、魅力だと思います。

日本代表時代には、選手生活を続けながら仕事や家事、育児もされていたそうですね。どのように両立していたのでしょうか。

小方:日本代表チームは、2週間に一度、週末に兵庫県姫路市で合宿があり、それが生活の中心でした。平日は仕事が終わったら子どもを保育園に迎えに行き、帰ってからご飯を作り、お風呂に入れて寝かしつけたら残りの家事を片付けます。全てが終わったころには24時近くになっている日がほとんどでしたね。合宿がある土曜日と日曜日は夫に任せていました。日曜日の夜に帰るのですが、最初は子どもも帰りを待ってくれていたものの、だんだんと待たずに先に寝るようになりましたね(笑)。

出産や育児のために、選手生活を休んだ期間はありましたか。

小方:1人目を出産したロンドン2012大会後から、リオ2016大会までは、一時的に競技を離れていました。シッティングバレーボールはジャンプしたり走ったりすることがないため、膝への負担が少なく、選手生命が長い競技だと言われています。もともと復帰するつもりで休みましたが、それでも復帰直後は大変でしたね。2人目の子どもの夜泣きが多い時期で睡眠時間が少なくなる中、4年間のブランクを埋める必要がありました。

たくさんの人にパラスポーツの魅力を広げたい

今は競技にどのような形で関わっているのですか。

小方:現在は日本代表を引退し、地元チームの「東京プラネッツ女組(めぐみ)」に所属して、国内大会に出場しながら現役生活を続けています。また、東京都シッティングバレーボール協会の競技普及部長として、地域での体験会や小学校での体験授業を行なっています。参加者から「楽しかった」などと感想をいただけるとうれしいですね。

現在の職場である渋谷区学びとスポーツ課パラスポーツ推進係では、どのようなことに取り組んでいるのでしょうか。

小方:東京2020大会において区内で開催されたパラリンピック競技を中心に、パラスポーツ全体の普及活動に努めています。たとえば、障がいの有無にかかわらず、誰でも参加できる「シブパラWAN!(ワン)」という体験会を月に2回実施しています。その中で、今年はボッチャ、デフバドミントン(注1)、シッティングバレーボールの3つの競技を取り上げています。私自身、初めてプレーする競技もありましたが、「こんなに奥深い競技があったのか!」と驚かされたのはボッチャです。ボッチャは頭脳戦の要素が強く、必ずしも若さが有利になるとは限らないことが魅力です。10月には私が企画に携わっているシッティングバレーボールの体験会もあるので、ぜひ、参加してみてください!
(注1)耳が完全に聞こえない、もしくは一定の基準以上に聞き取りづらいなどの聴覚障がいがある人たちによって行われるバドミントン。ルールは一般的なバドミントンと同じ。

パラスポーツの普及活動をされている中で、課題に感じていることを教えてください。

小方:障がいがある人たちのパラスポーツへの参加率の低さが課題だと思っています。参加率を上げるためには、まず競技を知っていただくことからだと思いますので、車いすラグビーとパラ卓球では渋谷区長杯大会を、パラバドミントンは渋谷オープン大会をそれぞれ開催し、多くの人に観戦してもらうための取り組みも企画しています。また、令和7(2025)年には東京都でデフリンピック(注2)が開催され、開閉会式とデフ卓球(注3)が東京体育館で行われます。どのような大会なのか、ほかのアスリートとデフアスリートの違いなどを知っていただくための新しいイベントも企画しているので、大会を盛り上げていきたいです。
(注2)聴覚障がいがあるアスリートのためのオリンピック。ルールはオリンピックとほとんど同じだが、耳の聞こえないアスリートのためにさまざまな工夫が施されている。
(注3)耳が完全に聞こえない、もしくは一定の基準以上に聞き取りづらいなどの聴覚障がいがある人たちによって行われる卓球。ルールは一般的な卓球と同じ。

最後に、区民の皆さんに向けてメッセージをお願いします。

小方:渋谷区は、東京都の中でもパラスポーツを普及するための推進活動に力を入れている地域の一つだと思います。いろいろなイベントを用意しているので、ぜひ、パラスポーツに触れてみてください。私自身も、実際にやってみて初めてシッティングバレーボールの魅力に気付きました。競技を知り、体験することで、そのスポーツの楽しさや面白さを発見できると思います。

「渋谷のラジオ」で放送中!

小方さんへのインタビューは8月20日・27日に「渋谷の星」で放送します。
渋谷のラジオ 87.6MHz(外部サイト)

パラスポーツサークル「シブパラWAN!」シッティングバレーボール体験会

「シブパラWAN!」は、障がいの有無にかかわらず、パラスポーツを楽しめるサークルです。誰でも参加できます。楽しくシッティングバレーボールを体験してみませんか。

日時

10月12日(土曜日)17時〜19時

場所

スポーツセンター

申し込み締め切り

10月9日(水曜日)

日時

10月26日(土曜日)17時〜19時

場所

ひがし健康プラザ

申し込み締め切り

10月23日(水曜日)

定員

各回20人(抽選)

申し込み

申込フォームまたは郵送で
詳しくは渋谷区ポータルのパラスポーツ体験「シブパラ WAN!(ワン)」のページを確認してください。

問い合わせ

学びとスポーツ課パラスポーツ推進係 電話:03-3463-1849 FAX:03-3463-3822

トスをあげてサーブを打つ直前の様子
東京2020大会カナダ戦でサーブを打つ小方さん
コートの中で座って練習や見学をする人たちの様子
令和5(2023)年8月にスポーツセンターで行われた体験会の様子