
誰でも楽しめて、真剣勝負ができるボッチャに夢中。
令和6年(2024年)5月1日号
第4回ボッチャ渋谷カップの優勝チーム「松濤クラブ」の皆さんに、大会の感想や地区体育会での取り組み、ボッチャの魅力などを伺いました。



力みのない正確なショットが勝利を引き寄せた
皆さんの自己紹介と、ボッチャを始めたきっかけを教えてください。
山本:大向地区体育会理事長を務めています。今年で83歳になります。私はもともと軽スポーツ(注1)が好きで、20年以上前にソフトバレーボールをはじめ、ほかにもさまざまな競技に取り組んできました。ボッチャを始めたのは10年ほど前で、渋谷区体育協会の講習を受けたのがきっかけです。当時は周りでボッチャをやっている人はほとんどいなかったのですが、少しずつ人気が高まってきて、区内11の地区体育会が合同で行う競技会「スポレック渋谷」にもボッチャが種目として加わり、大向地区体育会も「松濤クラブ」というチーム名で試合に出るようになりました。
永田:私は今年で75歳になります。以前はスポーツ吹矢をやっていましたが、5年ほど前から大向地区体育会でボッチャ教室を開催することになり、私もボッチャを始めました。
桑田:今年73歳で、ボッチャ歴は約3年です。私も軽スポーツが好きで、以前からウォーキングフットボールをやっているのですが、松濤中学校の掲示板でボッチャ体験のポスターを見て興味を持ち、大向地区体育会のボッチャ教室に通い始めました。
(注1)一般的なスポーツに比べて体への負荷が少なく、誰でも楽しめるスポーツの呼称。
松濤クラブは2月に開催された第4回ボッチャ渋谷カップで、見事優勝されました。おめでとうございます!大会の感想をお聞かせください。
桑田:今回初めてボッチャ渋谷カップに出場したのですが、年齢層は小学生から90代までと幅広く、車いすの人たちも参加していました。いろいろなチームと対戦でき、とても楽しかったです。優勝できるとは思っていなかったので、びっくりしましたね。予選リーグでは、松濤クラブを含めトップ2チームがともに3勝1敗で並びましたが、得失点差によって我々が決勝トーナメントに進めることになりました。決勝トーナメントでは、あれよあれよという間に決勝戦まで進んだので、不思議な気持ちでしたが、金メダルは本当にうれしかったです。すぐに友人たちに報告しました。
永田:決勝トーナメント2・3戦目は、山本さん、桑田さんのスーパーショットで勝つことができました。決勝戦では前回の優勝チームと対戦したのですが、最終エンド(注2)で相手チームのエースが投げにくいようにガードする位置にボールを置けたので、自分もチームに貢献できたかなと思っています。
山本:最初から勝敗にこだわっていなかったので、リラックスして試合に臨めたのが良かったのかなと思います。午前中の予選リーグよりも午後の決勝トーナメントの方が、調子が出てきてショットが正確になり、ミスが少なかったことも勝因ではないでしょうか。我々が優勝したことで、ほかの地区体育会のボッチャチームも頑張ろうという気持ちになってくれたらうれしいですね。
(注2)各チームが全てのボールを投げ終わるまでの試合中のひと区切りのこと。一般的に個人・ペア戦は4エンド、チーム戦は6エンドで戦う。
今大会に向けて、どのような練習をしてきたのですか?
山本:松濤クラブでは大会に向けての練習は特に行わず、チームのメンバーもその都度変わります。普段の練習は月1回、松濤中学校の体育館で2時間ほど行なっています。ボッチャ教室という形で、初心者も交えて楽しみながら練習していますが、今回優勝できたということは、自分たちが思っている以上に練習内容が濃いのかもしれないですね(笑)。
投げ方や順序などを工夫し、戦術を練るのが楽しい
ボッチャの魅力について教えてください。
桑田:ボッチャの魅力の一つは、年齢や障がいの有無にかかわらず、誰でも楽しめて、いろいろな人と真剣勝負ができることだと思います。ボッチャ教室に来ている小学生も大人顔負けのプレーをしますし、今大会の決勝で対戦した車いすを使用している人も補助器具(注3)を使って、巧みにプレーしていました。また、ボッチャはたった一投で試合展開がガラッと変わることがあるので、とても頭を使うんです。そこも面白いですね。
山本:ボッチャはボールの投げ方が自由ですし、ボールも大きさや重さは決まっていますが、材質は自由なんです。マイボールを持っている人もいますよ。チーム内で投げる人や順番を変えることができるので、戦術を練るのが楽しいですね。
永田:ボッチャは体力的な負荷が少ないので、高齢者の健康づくりにもおすすめですよ。勝負となるとつい闘争心が出てきますが、健康第一で楽しんでいます。8年後に山本さんの年齢になった時、同じようなスーパーショットが投げられるように、日々努力しているところです。
(注3)自力での投球が難しい選手は、投球の際に「アシスティブデバイス」と呼ばれる補助器具を使用することができる。
地区大会や初心者向け講習に、気軽に参加してほしい
大向地区体育会では、どのようなボッチャのイベントが行われていますか?
永田:毎年11月に「大向地区ボッチャ競技大会」を開催しています。昨年の第3回大会は、会場の松濤中学校の生徒も参加してくれて、中学生チーム、ファミリーチーム、ご近所さんチームなど全12チームが参加し、盛り上がりました。
山本:11月の大会はオープン大会のため、大向地区にお住まいの人であれば、どなたでも参加できます。友人や家族とチームを組んで、気軽に参加してほしいです。
ボッチャ普及のために、普段から取り組んでいることはありますか?
桑田:私は周りの人に、ボッチャの楽しさや面白さを伝えています。大向地区ボッチャ競技大会に参加した友人もいますし、ボッチャ渋谷カップの金メダルに興味を持ってくれる人も多く、うれしいですね。
永田:私が取り組んでいるのはポスター制作です。町会の掲示板に張ると、桑田さんのように見かけて参加してくれる人もいるので、効果があるのかなと思っています。また、毎月第3日曜日の午前に松濤中学校で開催している「ボッチャ教室」に加えて、毎月第2木曜日の午後には地域交流センター大向で「ボッチャ講習会」も開催しています。ルールから丁寧に教えますので、初心者の方々もぜひ、気軽にご参加いただければと思います。
今後の目標を教えてください。
山本:ボッチャ教室に参加してくれる人たちの実力を伸ばして、大会出場を目指すことと、ボッチャの競技人口を増やすことが目標です。
永田:ボッチャは親しみやすいスポーツですが、奥が深くて、努力次第でレベルアップできる競技です。私はボールが着地してから左右に転がってしまうことがよくあるので、うまくコントロールできるように練習して、さらに上を目指したいと思っています。
桑田:チームとしてはボッチャ渋谷カップの連覇を目指したいです。個人としては、永田さんと同じく、ボールコントロールの上達が目標です。今大会でも山本さんから「ボールが着地してからの転がり方をしっかり見ておくと、次に投げる時の力加減や狙う位置が分かるようになる」と、アドバイスをもらいました。今後は、その点を意識しながら練習を頑張りたいと思います。
最後に、区民の皆さんに向けてメッセージをお願いします。
永田:少ない球数で勝敗が決まるボッチャは“一投の重み”があり、とても緊張するスポーツです。でも、その緊張感を味わいながら勝負するのが楽しくて、夢中になりますよ。
桑田:ぜひ、ボッチャを一度体験してみていただきたいです。やってみると面白さがきっと分かると思います。
山本:渋谷区には11の地区体育会があり、ボッチャをはじめ、地域の皆さんにスポーツを楽しんでもらうためのさまざまな活動を行なっています。ボッチャは誰でも楽しめて、やればやるほど奥が深いスポーツですので、お近くの地区体育会で体験してみてください。来年のボッチャ渋谷カップで、お待ちしています!
「渋谷のラジオ」で放送中!
山本さん、永田さん、桑田さんへのインタビューは5月7日・14日に「渋谷の星」で放送します。
渋谷のラジオ 87.6MHz(外部サイト)
ボッチャのルール
- 縦12.5メートル×横6メートルのコートで行われ、選手はコート内に設けられた縦2.5メートル×横1メートルのスローイングボックス内から投球する。
- 白色のジャックボール(目標球)1球と、先攻(赤球)と後攻(青球)はそれぞれ6球を使用する。赤・青それぞれ6球を投げたり転がしたり、ほかのボールに当てたりして、いかにジャックボールに近づけるかを競う。ボールは上から投げても、下から投げても、蹴ってもよい。
ゲームの流れ
- 先攻がジャックボールを投げ、ジャックボール投球者が続けて自ボール(赤球)を投げる。
- 次に後攻が青球を投げる。ペア戦、チーム戦の場合、投球順は任意。
- ジャックボール・赤球・青球の3球がそろったところで一度計測を行い、ジャックボールから遠い距離にある側から投げ始める。
- 制限時間内に両者6球ずつ投げ合う。
- 両者全ての球を投げ終えた後、得点計算を行う。ジャックボールに一番近づけた側のボール1球につき、1点与えられる。両者のボールが2球以上、ジャックボールと等距離にあり、それらのボールよりもジャックボールに近いボールがない場合、両者のボール1球につき1点与えられる。最終エンド終了時、各エンドの得点を合算し、合計得点の高い方が勝ちとなる。
(参考:一般社団法人日本ボッチャ協会ホームページ)
第4回ボッチャ渋谷カップ
令和6年(2024年)2月25日、スポーツセンターで第4回ボッチャ渋谷カップが開催されました。過去最多となる56チームが参加し、予選リーグを経て決勝トーナメントが行われ、松濤クラブ(大向地区体育会)が初優勝を飾りました。

