
誰もがヒーローになれる、ボッチャの魅力。
令和7年(2025年)4月1日号
渋谷区スポーツ協会理事、日本ボッチャ協会事務局長の三浦裕子さんに、ボッチャの魅力や4月に開催される「BOCCIA JAPAN CUP(ボッチャ ジャパン カップ) 2025」の見どころについて伺いました。

ルールはシンプル、投げ方は自由、戦術は無限大
自己紹介をお願いします。
三浦:小学1年生から大学生まで競泳に打ち込み、大学卒業後はスポーツメーカーでオリンピック選手のサポート業務に携わりました。その後、退職・起業し、今はアスリートの活動やセカンドキャリアをサポートする事業を行なっています。一般社団法人日本ボッチャ協会(以下、日本ボッチャ協会)に携わるようになったのは、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、東京2020大会)の招致活動がきっかけです。当時の日本代表のヘッドコーチからオファーを受け、平成28(2016)年に広報担当になり、現在は事務局長を務めています。また、区の「シブヤ『部活動改革』プロジェクト」において国内初となるボッチャ部の設立をサポートさせていただいた経緯から、一般財団法人渋谷区スポーツ協会(以下、スポーツ協会)の理事も務めています。
ボッチャという競技について教えてください。
三浦:ボッチャは重度の脳性まひや四肢に重度の機能障がいのある人のために考案されたスポーツで、パラリンピックの正式種目です。年齢や性別、障がいの有無にかかわらず、誰もが一緒にプレーできることから、「究極のインクルーシブスポーツ」ともいわれています。ルールはとても簡単で、赤・青チームが6球ずつボールを投げ、ジャックボール(目標球)と呼ばれる白いボールに、自分たちのボールをどれだけ近づけられるかを競います。この流れを1エンドとして、個人・ペア戦は4エンド、チーム戦は6エンドでゲームを行い、その合計得点で勝敗が決まります。
ボールの投げ方には決まりがないそうですね。
三浦:コート内のスローイングボックス(注1)から投げることは決まっていますが、手で投げても足で蹴ってもいいのがボッチャの特徴です。障がいによって自力で投球できない選手は、ランプ(勾配具)を使うこともできます。ボールはマイボール制で、大きさ・重さが規定内であれば、硬さや材質は問いません。試合では何種類ものマイボールを用意し、戦術に合わせて使い分ける選手もいます。とても自由度が高く、奥の深いスポーツです。
(注1)選手がボールを投げる縦2.5メートル×横1メートルのエリア
ボッチャの魅力はどのような点にあると感じますか?
三浦:どんな人にも寄り添い、誰もがヒーローになれるスポーツであるという点に大きな魅力を感じています。小学生や高齢者、障がいのある選手がハイレベルなパフォーマンスを見せてくれると純粋にすごいなと思いますし、ひた向きに頑張っている姿を見ると応援にも熱が入ります。また、ボッチャは実際に体を動かすスポーツなので、続けることで身体機能が向上することも研究により明らかになっています。長年スポーツを諦めていた人でも、ボッチャを始めることで、生活の中でできることが増えたり、社会とのつながりを持つきっかけになったりすることがよくあります。私自身も水泳一筋で球技は苦手でしたが、日本ボッチャ協会に入って仲間たちと練習を重ねるうちに、その面白さにはまっていきました。なかなか上達しないのですが、とても楽しいですね(笑)。
ボッチャの醍醐味(だいごみ)を教えてください。
三浦:ボッチャは戦術が大事な頭脳スポーツです。ボールを投げるときに相手の弱点を突いたり、逆に自分の強みを生かしたり、試合を有利に進めるための戦術がなければどれだけ技術があっても勝てません。特に団体戦の場合は、チーム内での的確かつ迅速なコミュニケーションが不可欠で、パラリンピックなどの試合を見てもらうと、日本代表チームの強さの秘訣(ひけつ)はコミュニケーションにあることが分かると思います。攻め方の基本的な戦術はありつつも、戦術の幅は無限大です。「自分だったらどう攻めるかな」と考えながら試合を見るとより面白いですよ。
喜怒哀楽が入り交じるハイレベルな熱戦が見どころ
日本ボッチャ協会の活動について教えてください。
三浦:パラリンピック競技であるボッチャの選手強化・大会運営・競技普及の3つが事業の柱になります。中でも力を入れているのが地域での普及連携事業で、ボッチャが国民的スポーツになるように日々奮闘しています。実際、平成28(2016)年の国内におけるボッチャ認知度はたった約2%しかありませんでしたが、東京2020大会に向けて各自治体と連携し、講習会などの活動を行なったところ、現在では認知度が約50%にまでアップし、47都道府県中46か所にボッチャ協会が設立されるまでになりました。世界的にもボッチャは盛り上がりを見せていて、現在、国際ボッチャ競技連盟に加盟している国や地域は約80か国に上ります。
これまでの活動の中で印象に残っている出来事はありますか?
三浦:私自身が最も印象に残っているのは、全国の特別支援学校・学級の四肢に機能障がいのある中高生が参加する「全国ボッチャ選抜甲子園」です。決勝戦は東京で行われるのですが、全国から集まった生徒たちの喜怒哀楽を間近で感じ、毎回感極まってしまいます。長距離移動や他校の生徒たちとの交流を含め、普段なかなかできないことにチャレンジをして、成長する機会になっていることがとてもうれしいです。
4月5日・6日に開催される「BOCCIA JAPAN CUP 2025」について教えてください。
三浦:年齢や性別、障がいの枠を超えたインクルーシブ大会として平成29(2017)年から開催している、国内最大規模の団体戦です。小学生チームからシニアチームまで、全国32の予選会を勝ち上がった優勝チームによるハイレベルな熱戦が最大の見どころです。また、今年は特別開催として東京体育館が会場となり、昨年行われたパリ2024パラリンピック競技大会に出場した日本代表チームの「火ノ玉JAPAN(ひのたまジャパン)」や海外の強豪チーム、他競技のオリンピアン・パラリンピアンなどもゲストチームとして多数出場し、会場を盛り上げてくれます。
大会は誰でも観覧することができるのでしょうか?
三浦:入場無料で出入り自由なので、気軽にお越しください。会場内にはボッチャをはじめ、さまざまなパラリンピック競技を気軽に体験できるコーナーなども用意しています。中でも、ペットボトルのふたを指ではじく「フリックボッチャ」や、プログラミングを取り入れた「ロボッチャ」などは子どもたちに大人気です。この大会で国内最高峰のプレーを堪能しつつ、ボッチャを身近に感じていただけたらうれしいです。「ボッチャ渋谷カップ」(注2)の優勝チームも参加しますので、ぜひ、応援しに来てください。
(注2)区主催で行われるボッチャの区民大会
自分らしいスタイルでボッチャを楽しんでほしい
ボッチャに対する区の取り組みについて、どのように感じていますか?
三浦:全国でもいち早くボッチャを地域スポーツとして取り入れ、小学校や区民施設におけるボッチャセットの常備、講習会や「ボッチャ渋谷カップ」の開催など、精力的に活動していて、日本のボッチャ振興をリードする存在だと思っています。区役所本庁舎15階にあるボッチャコートも大盛況ですし、「ボッチャ渋谷カップ」も審判や運営スタッフをはじめ、大会を「支える」人たちが回を追うごとに増えていて、一体感と盛り上がりを感じます。また、「児童青少年センター フレンズ本町」には全国でも珍しい「CYBER BOCCIA(サイバーボッチャ)」(注3)が常設されています。子どもたちがゲーム感覚で気軽にボッチャを楽しむことができる、渋谷区らしいエンターテインメント性のあふれる取り組みだと思います。
(注3)ボッチャのボールやルールは通常のボッチャと同じで、カメラによるボール間距離の自動計測や多言語対応の音声ナビゲーションを備えた言葉の壁を超えるボッチャができるシステム。
区民の皆さんにメッセージをお願いします。
三浦:ボッチャは一度体験すると、より競技の面白さが分かると思います。まずは、近くのボッチャコートでボールを手に取り、その重さを感じて、投げてみていただきたいです。ボッチャを「する」以外にも、試合で好きな選手やチームを応援したり、審判やスタッフとしてイベントに参加したりなど、「見る」「支える」楽しみもあります。それぞれが自分らしいスタイルで、ボッチャを楽しんでいただけたらうれしいです。
「渋谷のラジオ」で放送中!
三浦さんへのインタビューは4月1日・8日に「渋谷の星」で放送します。
渋谷のラジオ 87.6MHz(外部サイト)
BOCCIA JAPAN CUP 2025 supported by かんぽ生命
日程
4月5日(土曜日)10時〜17時 開会式、予選など
4月6日(日曜日)10時〜17時 決勝、閉会式、表彰式など
場所
東京体育館(千駄ヶ谷1-17-1)
観覧申し込み
当日会場で
問い合わせ
学びとスポーツ課パラスポーツ推進係 電話:03-3463-1849 FAX:03-3463-3822
日本ボッチャ協会ホームページ(外部サイト)
区内でボッチャのできる施設
区内のさまざまな施設でボッチャを体験することができます。詳しくは、渋谷区ポータルのボッチャコートのページを確認してください。
ボッチャサポーター講習会(区優先枠)
日時
4月19日(土曜日)10時~12時または12時30分~14時30分
場所
区役所本庁舎15階ボッチャコート
定員
各10人(抽選)(注)対象や申し込み方法など詳しくは、渋谷区ポータルのボッチャサポーター講習会のページを確認してください。
問い合わせ
学びとスポーツ課パラスポーツ推進係 電話:03-3463-1849 FAX:03-3463-3822