
積み重ねた練習を信じて、つかんだ東京都中学新記録。
令和6年(2024年)12月15日号
陸上競技男子100メートルで東京都中学記録を持つ区立原宿外苑中学校の村上永遠さんと、同校陸上部のコーチを務める水野龍彦さんに、陸上に対する想いや目標について伺いました。


100分の1秒を競い合う楽しさに魅了された
お二人の自己紹介をお願いします。
村上:原宿外苑中学校3年生の村上永遠です。陸上部に所属し、専門種目は100メートルと4×100メートルリレーです。これまで関東大会、全国大会、ジュニアオリンピックに出場し、今年10月に開催された東京都中学校支部対抗陸上競技選⼿権大会では、男子3年100メートルで10秒65の東京都中学新記録で優勝しました。
水野:原宿外苑中学校陸上部コーチ(注)の水野龍彦です。大学時代の専門種目は400メートルハードルでした。これまで世界ユース陸上競技選⼿権大会、全国高等学校総合体育大会(インターハイ)などに出場し、日本学生陸上競技個人選⼿権大会では400メートルハードルで優勝しました。現役引退後は選手の育成に携わっています。
(注)部活動の顧問は生徒に関する情報提供など、コーチは専門的な技術指導や大会引率などを行う。
陸上競技に取り組むようになったきっかけを教えてください。
村上:小学生の頃から走ることが好きだったので、中学校で陸上部を選びました。最初は「ただ走るだけでいい」のではないかと思っていたのですが、地面を押しながら走ることを意識したり、ゴールまでの距離に応じて足の回転数(ピッチ)を考えたりと、さまざまなことに注意する必要があることを知り、陸上競技の奥深さを実感しました。
水野:小さい頃から中学2年生までサッカーをしていたのですが、当時は足がとても遅かったんです。それが悔しくて、もっと速く走れるようになりたいという思いから、陸上競技に転向しました。努力すればするほど記録が伸びていくのが楽しくて、次第に目標が高くなり、現役時代は毎日夢中で走っていましたね。
数ある陸上競技の種目の中で、短距離走を選んだ理由を教えてください。
村上:もともと持久力がなく、長い距離を走ることが得意ではなかったので、短距離走に興味を持っていました。実際に始めてみると、100分の1秒のわずかな差を競い合う楽しさに魅了され、最終的に100メートルを選びました。
たとえ失敗しても、いつか成功へとつながる
普段のトレーニングの様子について教えてください。
村上:水曜日以外は毎日練習しています。大会が多いシーズンは短距離を集中的に走り込み、冬の寒い時期は筋力トレーニングや体力づくりに力を入れています。
印象に残っている大会はありますか?
村上:今年7月に開催された都大会と8月に開催された全国大会です。私は3年生になるまではあまり注目されていませんでしたが、この夏の大会でタイムが一気に縮まり、それがきっかけとなって知名度が上がりました。特に全国大会はずっと目標にしていた大会だったので、大舞台で走ることができて本当にうれしかったです。
家族や部活仲間からは、どのようなサポートがありますか?
村上:家族は、栄養バランスを考えた食事を作ってくれたり、大会前には「楽しんでおいで」と声を掛けてくれたりします。部活仲間は、私の走りを見て改善点を指摘してくれるので、とても助かっています。
水野コーチの指導で、競技の成績が飛躍的に伸びたそうですね。
村上:はい。水野コーチは私の走っている姿を動画で撮影して、具体的に良くなかった動きを指摘しながら修正点を教えてくださいました。その説明がとても的確で分かりやすく、タイムが大幅に縮まりました。
水野:村上さんは、最初は膝が全く上がっておらず、まるで忍者のようにすり足で走っていました。それでも陸上部の顧問の先生が「部内で一番速いんです」とおっしゃっていたので、走る時のフォーム(形)を改善すれば、さらに速くなると感じました。指導を続けるうちに、村上さんの持つポテンシャルの高さを実感するようになりましたね。指摘した部分をすぐに理解して修正でき、修正後のフォームも安定して崩れません。地道な積み重ねを続ければ、今後さらに速くなると思います。
選手たちを指導する際に心掛けていることはありますか?
水野:ただ言われたことをこなすだけではなく、自分で考えて、自分で練習できるような環境をつくることを心掛けています。入部して間もない選手には、ウオーミングアップや練習方法などをアドバイスするのですが、ある程度、自分自身の走りや練習方法が確立してきた選手には、自主練習の時間を設けています。できるだけ指示を出さずに、選手自らが行動して、その結果うまくいった時の気付きを大切にしています。
思うような結果が出せない選手には、どのように接していますか?
水野:「たくさん失敗しなさい」と伝えています。うまくいかない時も、その失敗を次に生かすことができれば良いと考えています。特に、良いタイムがなかなか出せない選手は試合中にネガティブになりがちです。そんな時は少しでも気持ちが楽になるように、「失敗しても大丈夫」と声を掛けています。
世界大会でメダルを取れるような強い選手になりたい
渋谷区では令和3年度から「シブヤ『部活動改革』プロジェクト」が始まり、外部の指導者が学校の部活動に協力する体制づくりを進めています。生徒や学校側にはどのようなメリットがあると感じますか?
水野:生徒たちは専門的な指導が受けられるため、より良い成果が残せるようになると思います。その結果、区全体の部活動のレベル向上にもつながると期待しています。
村上:水野コーチから指導を受ける前は、記録を伸ばすことよりも陸上競技自体を楽しむことを重要視していました。その当時も楽しく走っていましたが、水野コーチの指導を受けて記録がどんどん伸びるようになり、走ることがさらに楽しくなりました。
渋谷区全体の部活動の特徴や強みを教えてください。
水野:区内の学校の陸上部は、合同練習などを通じて他校と交流する機会が多くあることが特徴です。また、交流を通じて切磋琢磨することが選手のモチベーションの向上につながり、同時に練習の質も上がっていくのが強みであると感じています。
陸上競技の魅力を教えてください。
村上:自分自身との勝負であると同時に、他の選手や過去の記録との勝負でもあるところが魅力です。これらの存在が刺激となって、もっと良い記録を出したいという思いにつながっています。
水野:努力すればするほどタイムが縮まるところが魅力だと思います。また、陸上競技は個人競技ではありますが、一緒に練習する仲間との絆も大切です。特にリレーは、選手個人の力量だけでなく、チームメートとの信頼が大きく関わってきます。個人競技でありながらチームスポーツでもあるところが大きな魅力ですね。
今後の目標を教えてください。
村上:夏の全国大会は調子が上がらず予選落ちしてしまったので、来年、高校生になったら、インターハイの決勝まで進み、メダルを取れるように頑張りたいです。将来的には100メートルで9秒台を出して、世界大会でメダルを取れるような選手になりたいです。
水野:目標は、原宿外苑中学校陸上部を全国大会の常連校にすることです。渋谷区の皆さんから応援されるような部活にしていきたいですね。
最後に、区民の皆さんに向けてメッセージをお願いします。
村上:何事においても諦めたくなったり嫌になったりすることはあると思いますが、最後まで努力し続ければ必ず報われる時が来ると思います。今、何かに挑戦している人は一緒に頑張りましょう。来年2月1日と2日に「2025日本室内陸上競技大阪大会」が開催されます。YouTubeでも配信されますので、ぜひ、応援をよろしくお願いします。
水野:これからの原宿外苑中学校の陸上競技部にご注目ください。温かい応援をよろしくお願いします。
「渋谷のラジオ」で放送中!
村上さん、水野さんへのインタビューは12月17日・24日に「渋谷の星」で放送します。
渋谷のラジオ87.6MHz(外部サイト)
村上さんの主な競技成績(令和6年度)
7月 第63回東京都中学校総合体育⼤会陸上競技⼤会
- 男⼦3年100メートル 1位 10秒85(⼤会新記録)
- 男⼦共通4×100メートル 1位 43秒47(⼤会新記録)
7月 第70回全⽇本中学校通信陸上競技⼤会東京都⼤会
- 男⼦共通4×100メートル 1位 43秒22(⼤会新記録)
8月 第52回関東中学校陸上競技大会
- 男⼦3年100メートル 2位 10秒85
- 男⼦共通4×100メートル 3位 43秒35
9月 第77回渋谷区立中学校陸上競技大会
- 男⼦3年100メートル 1位 10秒97(予選10秒93 大会新記録)
10月 第77回東京都中学校⽀部対抗陸上競技選⼿権⼤会
- 男⼦3年100メートル 1位 10秒65(東京都中学新記録)

