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観ても指しても楽しめる。将棋文化を未来へつなぐ。

令和6年(2024年)9月15日号

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9月8日に創立100周年を迎えた、公益社団法人日本将棋連盟。会長の羽生善治さんに、渋谷区と将棋の文化のつながりや今後の展望について伺いました。

羽生善治(はぶよしはる)さん「駒テラス西参道や将棋会館は、将棋を気軽に楽しんでいただける場所にしたいと思っています。ぜひ、足を運んでみてください。」
公益社団法人日本将棋連盟 会長 羽生善治(はぶよしはる)さん

昭和60(1985)年12月、四段プロデビュー。平成元(1989)年、初タイトルの「竜王」獲得。平成8(1996)年、7大タイトル独占。平成29(2017)年、「永世七冠」を達成。平成30(2018)年2月、国民栄誉賞受賞。同年11月、紫綬褒章受章。タイトル獲得は歴代最多の通算99期。令和5(2023)年は王将戦でタイトル戦に登場。

日本将棋連盟は、大正13(1924)年の創立から令和6(2024)年9月8日で100周年を迎えました。

創立100周年の節目に生まれ変わる、千駄ヶ谷の将棋会館

令和5(2023)年6月に日本将棋連盟の会長に就任されたときの思いを教えてください。

羽生:日本将棋連盟は、長きにわたって現役の棋士たちが運営してきた組織です。会長は選挙で決まるのですが、創立100周年の節目を迎えるにあたり、先人たちがつないできた伝統的な将棋の文化を、次世代へ良い形で引き継いでいきたいという気持ちで立候補して、会長職を拝命しました。就任当初の私は52歳で、人生の折り返し地点を過ぎたタイミングでもありました。

将棋の総本山として昭和51(1976)年に建設された東京・将棋会館(以下、将棋会館)は、羽生さんにとって、どのような場所でしょうか。

羽生:将棋会館の建設は先人たちの悲願でもありました。また、棋士にとっても、ファンの皆さんにとっても、象徴的な場所の一つです。私自身は小学3年生の頃に小学生将棋名人戦で初めて訪れ、12歳で奨励会(注1)に入会してからは定期的に通うようになりました。朝から晩まで練習に励んで修行を積み、一番多くの対局をした場所のため、将棋会館にはたくさんの思い出が詰まっています。
(注1)日本将棋連盟の棋士養成機関。

将棋会館や将棋堂(注2)があり、将棋の文化と縁が深い千駄ヶ谷の街にはどのような印象を持っていますか。

羽生:千駄ヶ谷には40年以上通っていますが、今も昔も大きくは変わらず、静かで落ち着きがある街という印象があります。将棋堂も子どもの頃からなじみがあり、人気スポットとなった今でも、時々ひっそりとお参りしています(笑)。毎年1月5日には「将棋堂祈願祭」が行われていて、町会の皆さんと一緒に新たな一年の無事と将棋界の発展をご祈祷しています。
(注2)鳩森八幡神社境内に建立された王将の大駒を納める六角堂。

これまで長く親しまれてきた将棋会館は、建物の老朽化などのため移転・建て替えとなり、創立100周年を迎えた9月8日に、新しい将棋会館がお披露目されました。建物の見どころを教えてください。

羽生:新しい将棋会館は、千駄ケ谷駅前の千駄ヶ谷センタービルの1階にあります。以前の将棋会館と比べるとアクセスが良くなり、開放感のあるワンフロアでイメージもガラリと変わりましたね。カフェも併設されているので、将棋になじみのない人も気軽に入ってくつろいでいただきたいです。長年慣れ親しんだ将棋会館の移転は寂しくもありますが、引き続き千駄ヶ谷の地域の皆さんと連携しながら、新しい場所で将棋の歴史をつくっていけることはとても感慨深いです。

東京・将棋会館の外観
東京・将棋会館 画像提供:日本将棋連盟

駒テラス西参道を、将棋が日常に溶け込んだ地域交流の拠点に

日本将棋連盟と渋谷区は、令和2(2020)年に相互協力に関する協定を締結しました。これまでにどのような取り組みを実施してきたのでしょうか。

羽生:子どもを対象とした将棋スクールの開催や、令和5(2023)年6月の「駒テラス西参道(以下、駒テラス)」の建設など、将棋を通して地域の活性化に取り組んできました。駒テラスは、将棋に関する活動だけではなく、タウンミーティングや子どもたちの放課後の居場所としても活用いただいています。地域の皆さんには、今後もこの場所を起点に交流を深めていってほしいです。渋谷区は外から人が集まるにぎやかな街というイメージがありましたが、会長に就任して地域の集まりに参加する機会が増えてから、地元の人たちのつながりがとても深い街でもあることに気付きました。

駒テラスのコンセプトや魅力を教えてください。

羽生:昔の日本では「縁台将棋」のように、縁台で夕涼みをしながら将棋を指したり、観たりしている風景があちこちで見受けられました。駒テラスはこのような日常に溶け込んだ将棋の在り方を大切にして、誰もが気軽に将棋を楽しめる場所にしたいと考えています。また、将棋のルールを覚えたばかりの人や、「観る将(注3)」も楽しめるように、子どもや初心者向けの教室、対局のライブビューイングなどのイベントにも力を入れています。
(注3)自らは将棋を指さずに、対局の観戦やイベント参加を主に楽しむファンの呼称。これに対して、自ら将棋を指すファンを「指す将」と呼ぶ。

「観る将」は、将棋の新しい楽しみ方として人気を集めていますね。

羽生:私は対局で全国各地を訪れていますが、顔なじみの「観る将」が増えました。皆さん現地で対局を観戦するだけでなく、旅行やグルメなども楽しんでいるそうです。実はタイトル戦は公募形式で開催地を決めていて、神社仏閣、城、博物館、美術館、空港など、さまざまな場所で対局が開催されています。たとえば渋谷区の場合は、高層ビルの展望台などで対局するというアイデアも面白いのではないでしょうか。将棋は大掛かりな設備やスペースを必要としないため、そのような面白い試みにも、できるだけフットワークを軽くして対応していきたいと考えています。

時代と共に進化する将棋の文化を、渋谷区から広げていく

今年11月には「第50回将棋の日in渋谷(注4)」が開催されます。この取り組みについて教えてください。

羽生:江戸時代の将棋は家元制度で、将棋三家(大橋本家、大橋分家、伊藤家)が将軍家の前で模範試合を披露する務めがありました。それが毎年11月17日(旧暦)に行われていたことから「将棋の日」が制定され、全国各地でイベントを行うようになったんです。記念すべき50回目となる今年は、将棋会館がある渋谷区で開催されます。3択クイズ形式で次の一手を予想する「次の一手名人戦」、数名の棋士で同時に100面の対局を進行する「100面指し」など、さまざまな企画を予定していますので、ぜひ、ご参加ください。また、今年は3年に一度の「国際将棋フォーラム」も開催されます。渋谷区と連携して日本将棋連盟創立100周年を盛り上げたいです。
(注4)11月9日(土曜日)・10日(日曜日)開催。詳しくは、10月1日発行のしぶや区ニュースを確認してください。

日本将棋連盟としての今後の展望を教えてください。

羽生:今後の展望は2つあります。1つは、趣味が多様化する次世代のニーズに合わせて将棋の文化を発展、継承させていくことです。もう1つは、将棋を通したコミュニケーションや地域の活性化など、将棋の付加価値を見出して提供していくことです。最近ではデジタル技術の活用を進めていて、子ども向けのオンライン将棋スクールを始めました。今後、将棋の入り口としてデジタル技術を活用し、駒テラスのような場所での体験へとつなげていく取り組みにも力を入れていきます。

羽生さんは、将棋の魅力をどのような点に感じていますか。

羽生:将棋は古代インドから伝来し、日本では江戸時代から現在にかけて、何十回とルールが変わっているのですが、その変遷に日本らしさが色濃く反映されていて、とても奥深いんです。たとえば、相手から取った駒を自分の駒として再利用できる「持ち駒」は、日本独自の画期的なルールなんですよ。伝来した文化を独自のものに変えて楽しむ姿勢には、どこか日本らしさがありますよね。長く指せば指すほど、日本の伝統文化の素晴らしさや先人たちの英知を感じられるのが将棋の魅力です。

最後に、区民の皆さんや将棋ファンに向けてメッセージをお願いします。

羽生:新しい将棋会館や駒テラスは、区民の皆さんに将棋を気軽に楽しんでいただける場所にしていきたいと思っていますので、ぜひ、足を運んでみてください。また、子どもたちをはじめ、将棋の上達を目指している人たちにお伝えしたいのは、続けることの大切さです。毎日一局指す、詰将棋を一題解くなど、数分でもコツコツ積み重ねていくと将棋は着実に上達すると思います。渋谷区の日常に将棋が溶け込み、いろいろな楽しみ方ができるように努力していきますので、これからもよろしくお願いいたします。

「渋谷のラジオ」で放送中!

羽生さんへのインタビューは9月17日・24日羽生さんへのインタビューは9月17日・24日に「渋谷の星」で放送します。
渋谷のラジオ87.6MHz(外部サイト)

「渋谷×将棋」の取り組み

区では、将棋の伝統文化を次世代に広げるための活動として「区長杯こども将棋大会」や、部活動改革プロジェクトの一つである「渋谷ユナイテッド 将棋クラブ」などを実施しています。
また、将棋の新しい楽しみ方である「観る将」の聖地を目指す駒テラス西参道では、地域と一体となったイベントや施設の貸し出しを行なっています。

問い合わせ

区長杯こども将棋大会:学びとスポーツ課学び支援係 電話:03-6451-1417 FAX:03-6451-1428
渋谷ユナイテッド 将棋クラブ:渋谷区スポーツ協会クラブ事業部 電話:03-5428-6755
渋谷区スポーツ協会ホームページ(外部サイト)

将棋をする人のイラスト

施設情報

東京・将棋会館

住所

千駄ヶ谷1-18-5 ヒューリック将棋会館千駄ヶ谷ビル1階

アクセス

JR中央・総武線千駄ケ谷駅から徒歩約2分
(注)将棋道場、ショップ、カフェが併設される店舗「棋の音」は10月1日オープン予定。
日本将棋連盟ホームページ(外部サイト)

駒テラス西参道

住所

代々木4-16-1

アクセス

小田急線参宮橋駅東口から徒歩約3分
京王バス・ハチ公バス参宮橋停留所から徒歩約1分
駒テラス西参道ホームページ(外部サイト)