
菜園を通じて、世代を超えた地域の輪が広がる。
令和7年(2025年)6月1日号
子どもたちの居場所や学校を中心とした地域のつながりを育む「つながる菜園プロジェクト」のお二人に、幡代小学校での菜園活動の様子などについて伺いました。


つながる菜園プロジェクト
つながる菜園プロジェクト(以下「つながる菜園」)は、笹塚・幡ヶ谷・初台駅周辺(ササハタハツ)エリアの小学校に菜園をつくり、「全ての子どもたちにとって平等な居場所づくり」と「地域のコミュニティーづくり」を目指すプロジェクトです。令和3年にスタートし、現在は幡代小学校内に学校菜園を設け、週1回、子どもたちと一緒に土作りから種まき、収穫までを行なっています。収穫した野菜は、理科の授業に取り入れたり、給食の食材として活用したりすることで、食と教育の連携を図っています。また月1回、幡代小学校向かいにある初台第二児童遊園地の花壇では、近隣住民参加型の花壇整備やお茶会などを行う「つながるガーデン」を実施しています。
つながる菜園 Instagram(外部サイト)


教室以外の居場所をつくるために、学校菜園が必要だと感じた
自己紹介をお願いします。
佐々木:「つながる菜園」のプロジェクトリーダーを務める佐々木桐子です。初台生まれ・初台育ちで、現在も渋谷区に住んでいます。菜園づくりを行なっている幡代小学校は私の母校で、父や子どもたちも同校を卒業しています。
荒島:「つながる菜園」のサブリーダーの荒島智貴です。息子の誕生をきっかけに、妻の実家がある渋谷区に引っ越してきました。私の息子も幡代小学校の卒業生です。
「つながる菜園」を始めたきっかけを教えてください。
佐々木:「オーガニックの母」と呼ばれるアリス・ウォータースさんの「エディブル・スクールヤード」という活動を知ったことが始まりでした。この活動は学校内に菜園をつくり、子どもたちが種まきから収穫、調理、食事までを体験するという教育活動です。その後、多摩市の公立小学校で導入されていることを知り、見学に行ったことで、「渋谷区の学校でも取り組んでみたい」と強く感じるようになりました。また、さまざまな理由で学校生活に困難を抱える児童向けの菜園を活用した教育プログラムに勤務先の大学で携わった経験もきっかけになりました。楽しそうに作物を育てている子どもたちの様子を目の当たりにして、「地域の学校にも、教室以外に子どもたちの居場所として菜園が必要だ」と改めて感じるようになりました。
「つながる菜園」が生まれた経緯を教えてください。
佐々木:最初は私1人で小学校の先生や区に相談していたのですが、令和2年に「ササハタハツまちラボ(注)」が官民連携で設立され、事業の一環として、笹塚・幡ヶ谷・初台駅周辺(ササハタハツ)エリアにおける市民共創のプロジェクトを支援するササハタハツピープルまちづくりサポート(以下「ササハピ」)事業が始まりました。この事業に応募し、採用されたことで、令和3年に「つながる菜園」がスタートしました。
荒島:佐々木さんとは子ども同士が同じ保育園だったため、パパ友・ママ友として以前から交流がありました。佐々木さんが「こんな夢があるんです!」と菜園の話を熱く語る姿に触れ、その思いに強く共感し、ササハピへの応募時にメンバーとして加わりました。
(注)渋谷区、京王電鉄株式会社、一般社団法人渋谷未来デザイン、東急不動産株式会社で構成される任意団体。笹塚・幡ヶ谷・初台駅周辺エリアの将来像を共有・実現するため、産官学民が連携してまちづくりに取り組んでいる。
菜園・花壇をきっかけに広がる地域の輪
学校菜園ではどのような野菜を育てていますか?
佐々木:理科の授業で使うもの、成長が早いものを中心に、大豆やキャベツ、ジャガイモ、大根、ラディッシュ、大葉などを育てています。キャベツが豊作だった時には、地域の飲食店にご協力いただき、サラダにしてイベントなどで皆さんに提供しました。
荒島:苗ではなく種から育てるため、失敗することもあります。特に、ニンジンやキュウリは難しかったですね。一方、大根は比較的育てやすく、100本以上収穫できた年もありました。
活動に参加する子どもたちの反応はいかがですか?
佐々木:活動を始めたばかりの頃は参加者が少なかったのですが、今では学校全体に活動が知れ渡り、活動日には「土を掘りたい!」「種まきしたい!」「虫を捕りたい!」と多くの子どもたちが集まってくれるようになりました。また、収穫した野菜を使った給食は、喜んで残さず食べてくれます。
荒島:学校で「幡代小学校の自慢したいこと」についてのアンケートを行なったところ、「つながる菜園」が1位に選ばれました。子どもたちが楽しんでくれていることを実感できて、とてもうれしかったです。
印象に残っている出来事を教えてください。
佐々木:プロジェクト当初から、菜園を子どもたちの居場所にするだけでなく、学習にも生かしたいと考えていました。ありがたいことに昨年度から5年生・6年生の理科の授業で、学校菜園で学習する時間が新設されました。ヘチマやジャガイモを子どもたちと一緒に植えて成長を観察しながら、5年生はおしべやめしべ、6年生は光合成について学んでいます。学校菜園が授業でも活用されるようになり、活動がどんどん広がっていることを感じています。
荒島:学校菜園と並行して、月1回、初台第二児童遊園地で地域住民が主体となり、自治体の支援を受けながら維持・管理を行う自主管理花壇「つながるガーデン」の活動を実施しています。活動後はお茶会を開催して、一緒にコーヒーを飲むのが恒例です。活動を始めてからは、街中で声をかけられたり、子どもの学校行事であいさつされたりと、地域のつながりが広がっていくのを実感しています。
将来は誰もがいつでも気軽に交流できるカフェを開きたい
将来の展望や目標を教えてください。
荒島:初台緑道付近に地域のコミュニティーの場として、カフェのようなお店をオープンしたいという夢があります。私も佐々木さんもコーヒーが好きなので、子どもから高齢者まで、誰もが飲み物を片手に気軽に交流できる場をつくりたいと思っています。
佐々木:これからも、積極的に地域の飲食店と連携し、子どもたちが育てた野菜を使った料理やお菓子をイベントなどで提供する機会をもっと増やしていきたいです。
今後の活動予定を教えてください。
佐々木:7月13日に開催される「初台地区ふれあいまつり」で、学校菜園や「つながるガーデン」の活動を紹介する写真の展示と、収穫した野菜やハーブを使った焼き菓子とドリンクの提供を行います。ぜひ、遊びに来てください!また、毎月開催している「つながるガーデン」の活動日は、菜園の外にある黒板や「つながる菜園」のInstagramでお知らせしています。興味がある人はぜひ、気軽に参加してください。
区民の皆さんにメッセージをお願いします。
荒島:渋谷区に住み始めて17年経ち、大都会なのに緑が豊かで、子どもから高齢者まで幅広い世代の皆さんがつながりを大切にしながら暮らしているこの初台という地域がとても好きになりました。これからも「つながる菜園」を通じて、地域の皆さんとつながりながら活動を続けていきたいです。
佐々木:土に触れ、地域の皆さんと交流しながら、心も体もリフレッシュできます。この楽しさをぜひ、一緒に体感できたらうれしいです!
「渋谷のラジオ」で放送中!
佐々木さん、荒島さんへのインタビューは6月3日・10日に「渋谷の星」で放送します
渋谷のラジオ87.6MHz(外部サイト)