ちがいをちからに変える街。渋谷区

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平成29年第1回区議会定例会での発言

更新日

2017年3月3日

【更新日】平成29年3月3日

(3月2日(木曜日)、第1回区議会定例会本会議で述べた長谷部健区長の発言を掲載します。)

本日ここに平成二十九年第一回渋谷区議会定例会を招集し、平成二十九年度予算案をはじめ、多くの議案についてご審議をお願いすることとなりました。
この機会に、当面する区政の課題について私の所信の一端を申し述べ、区議会及び区民の皆様のご理解とご協力を賜わりたいと思います。

一(一)私が区長に就任してから二年が過ぎようとしています。任期の折り返し点を迎え、これまでを振り返ると、それは渋谷区ならではの手厚い福祉や教育を継承しつつ、新たなアイデアを加え、さらに発展させようと取り組んできた二年間であり、手ごたえも感じています。
 例えば、全国に先駆けて制定した「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」に基づくパートナーシップ証明への取組みは、他の自治体や企業等の動向に大きな影響を与え、証明書の交付実績も十六組を数える中、性別等にとらわれず多様な個人を尊重し合う社会の実現に向け、人々の意識も着実に変化してきたと思います。今後も、アイリス講座の拡充やLGBT関連イベントである「東京レインボープライド」会場へのブース出展、コミュニティスペース「渋谷にかける虹」の運営体制の強化など、さらに啓発・理解促進に努めてまいります。
 また、それぞれの強みを活かしながら公民連携により地域社会の課題解決に取り組む「シブヤ ソーシャル・アクション・パートナー制度(S-SAP)」については、これまで七社と協定を締結し、協力を進めていますが、対象を区内所在の大学等にも拡げ、さらに多様な分野にわたって、新たな協働体制を築いていきたいと思っています。
(二)こうした取組だけでなく、社会経済情勢が大きく変化している時代を捉え、将来にわたって区政を発展させていくため、昨年、二十年後を展望した「渋谷区基本構想」を区議会のご議決を得て策定しました。
 そして、本年二月、この基本構想において政策分野別に定めた七つの未来ビジョンの着実な実現を図るため、「渋谷区長期基本計画」及び「渋谷区実施計画2017」を策定いたしました。
 長期基本計画では、今後十年間にわたって進捗管理が適切に行えるよう、施策の柱ごとに基本目標とその具体化に向けた施策の方向性を定めるとともに、それぞれの施策を評価するための成果指標を設定しました。
 また、実施計画では、保育環境の整備をはじめ、学校教育の充実、高齢社会の進展への対応など、区の喫緊課題に対するより具体的な区の施策について、今後三年間の重点計画を明らかにしています。
 今後は、これらの計画に基づき、様々な施策を展開し、基本構想に掲げる「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」、そして、区民が誇れる「成熟した国際都市」の実現を目指してまいります。
 そのためにも、区議会をはじめ、区民のみならず、事業者、大学、NPO団体、ボランティア、来街者など、多くの人々のご理解とご協力が不可欠です。ハンドブックやプロモーション動画などにより、わかりやすく情報を発信し、周知するとともに、渋谷区の未来を考えるワークショップの開催や社会で活用が進みつつあるAI(人工知能)を基本構想のアンバサダー(大使)として取り入れ、多くの人々の声を集め、コミュニケーションを図るなど、さらに関心が高まるよう、努めてまいります。

二 具体的な主要施策について、基本構想の分野に沿って述べたいと思います。まず、教育についてです。
 子どもは未来であり、子どもたちの成長は、私たちの、そして社会の希望そのものです。この思いから、基本構想の第一の柱として「子育て・教育・生涯学習」を掲げました。
 加速されるICT化・AI化やグローバル化に対応し、子どもたちにICT機器を活用して問題解決する力や外国語、とりわけ英語でコミュニケーションする力を身に付けさせ、社会に送り出すことは、私たちの責務とも言えます。そこで、「教育は未来への最大の投資」と位置付け、新年度予算では、教育委員会と連携し、思い切った予算編成を行いました。
(一)ICT教育では、モデル校・代々木山谷小学校での検証結果を生かし、全区立小・中学校の児童・生徒と教員に、一人一台タブレット端末を貸与します。携帯電話回線(LTE)を利用した堅牢・安全なネットワークを組むことで、授業はもちろん、家庭での持ち帰り学習も可能となるなど、いつでも、どこでも安心して使うことができるシステムを、九月から導入いたします。
 あわせて、クラウド基盤を利用した統合型校務支援システムを導入して教員の校務負担の軽減を図るとともに、これらICT化の連携運用により得られるデータ等を学校経営に利活用する「スマートスクール」に生まれ変わる第一歩とします。
(二)英語教育では、聞く・話す力を高めることが大切です。
 中学校英語教育重点校や小学校英語教育モデル校での実践を踏まえ、ALT(英語指導助手)の派遣日数を小学校へは約二倍に、中学校へは二・三倍に増やすとともに、「英語漬け」の生活を体験する「イングリッシュキャンプ」を試行いたします。また、大学等と連携し、小・中学生と留学生との交流の機会を確保するなど、子どもたちの英語によるコミュニケーションの意欲や能力を高めてまいります。
 加えて、ICT教育と英語教育に読書教育も合わせた三者が有機的に連携して子どもたちの言語能力を相乗効果的に高めていく「言語能力育成システム」を構築するため、小学校の学校図書館専門員を増やし、あわせて中学校と地域図書館との連携をさらに進めます。
(三)一方、特別な支援を必要とする児童が増加傾向にあります。
 そこで、より細やかに適切な指導・支援が行えるよう、新年度には区内四校目の特別支援教室・巡回指導拠点校を中幡小学校に設置し、特別支援教育担当指導教員を配置いたします。さらに、平成三十年度に区内六校目となる特別支援学級・知的障害固定学級を千駄ヶ谷エリアの鳩森小学校に開級する準備に着手します。
 そのほか、周囲とのコミュニケーション等に課題を抱えているものの、特別な才能を秘めた子どもたち、いわゆる「ギフテッド」について、その才能を伸ばし、将来につながる学びが展開できるよう、新たな教育システムの構築を目指します。そのため、個別指導計画の作成や高度な指導ができるよう、学識経験者の知見を活用した専門部会の設置や専門指導員の配置、さらには子どもの有する特別な才能と専門指導員とのマッチングや教員・保護者への支援などを行うコーディネーターの設置等を進めてまいります。

三 次に、子育てについてです。
(一)待機児童解消に向けた保育施設の確保・整備は、区政の最重要課題の一つです。
 昨年、第二回定例会で、「平成二十九年度からの三年間で千四百人規模の定員拡大」を目標とすることを申し上げましたが、入所申込者数が引き続き増加していることから、一年前倒しで実現できるようスピードをさらに加速させ、一年目となる二十九年度は八百人規模での定員拡大を図ることとしました。
 本年四月には「認定こども園」一園、「認可保育園」四園を開設し、十月には代々木公園内の保育施設を含め三園の開設、また、三十年度には、七施設の開設のほか、既存施設の改修・建替えなども含め、六百人規模の定員拡大を予定しています。施設整備に当たっては、これらの計画が確実に実現できるよう、引き続き、近隣住民の方々のご理解・ご協力を得られるよう丁寧に対応し、区議会と連携して取り組んでまいります。
 加えて、恵比寿ガーデンプレイス内に設置される企業主導の事業所内保育所における地域枠の確保のほか、待機児童を対象に、児童の居宅にベビーシッターを派遣する居宅訪問型保育事業や、やむを得ず認可外保育施設を利用しなければならなくなった方々への保育利用料の一部助成を実施するなど、増加する保育需要に適切に対応してまいります。
(二)他方、良質な保育・教育の確保の礎となるのは、質の高い人材の確保であることは言うまでもありません。本年度開始した「保育従事職員宿舎借り上げ支援事業」の対象人員の規模を拡大し、保育人材の確保とその定着を、より堅固なものとしてまいります。
 また、本区における保育の質の向上に向け、昨年、海外の先駆的・特徴的な教育メソッドを学ぶため、職員を派遣しましたが、新年度においては、より実践的な研修を取り入れるなど工夫を加え、「渋谷区幼児教育プログラム」の改訂に反映させ、「渋谷区就学前教育プログラム」として策定したいと考えています。
(三)本区では、子育て支援について、保健所と子ども家庭部、教育委員会等、関係部署が相互に連携し、推進してまいりました。昨年は、子ども家庭支援センターと子ども発達相談センターを同一建物内に移設し、両センターを統括する「子ども総合支援センター」での一体的な事業運営と連携強化を図ったところです。
 このような中、母子保健法と児童福祉法が改正され、母子の健康保持及び増進と子育て支援事業の利用支援や虐待対応の関係機関として「母子健康包括支援センター」の設置に努めることが定められました。
 本区では、この機会に、現在、保健所が行っている妊娠前から出産期、子育て期にいたるまでの健診事業や相談事業等と子ども総合支援センターが行っている虐待や配慮が必要な子どもへの対応等を一体化し、子どもを持つすべての家族を包括的に支援する「渋谷区版ネウボラ」として、母子健康包括支援センターを整備することといたします。
 今後、フィンランドはもとより、先進事例の研究を進め、事業スキームや効果的な連携体制について、検討してまいります。また、設置場所については、一体的対応の必要から、神南分庁舎跡地を最有力候補と考えており、その建替え中にも途切れなく本サービスを提供するため、仮庁舎を活用することも視野に入れたいと思います。

四 次に、区民福祉の増進についてです。
 本区では、あらゆる人が、自分らしく生きられる街を実現するため、これまでも高齢者や障害者が安心して暮らせる環境の整備に努めてまいりました。
(一)その基盤となる施設として、保育園、認知症カフェ、地域包括支援センター及び高齢者・障害者・一般世帯向け住宅38戸を備えた幡ヶ谷二丁目複合施設が平成二十九年度に完成します。また、三十年五月には、旧本町東小学校跡地に特別養護老人ホーム100床、認知症高齢者グループホーム2ユニット18人等を中心とする施設を開設します。さらに、老朽化に伴い大規模改修が必要な「渋谷区高齢者ケアセンター」について、特別養護老人ホームを中心とした施設に整備するための計画策定に着手します。
 一方、超高齢社会に対応した地域包括ケアシステムの構築が急がれますが、認知症高齢者の増加は確実であり、その早期発見や行方不明になってしまった場合の対応など、認知症対策は重要な課題です。
 「認知症初期集中支援チーム」や「認知症相談会」などの事業に加え、新年度からは、日常生活圏域毎に協力医を配置し、地域包括支援センター職員が、医療に関していつでも相談できるようにいたします。これにより、その方の症状に合わせ速やかに関係機関に結び付け、支援することが可能になります。
 また、徘徊等への対策として、現在行っている見守りキーホルダー事業のほか、新たにメール配信を活用したSOSネットワークを構築します。これは、事前に登録いただいた方が行方不明になったとき、認知症サポーター等に対しその情報を配信し、多くの目で探索してもらうことで迅速な発見につなげるものです。
 今後も、地域や多くの方々と連携協力し、認知症の方やそのご家族が、住み慣れた地域で安心して暮らせる施策を構築してまいります。
(二)障害者福祉の重要な施策の一つとして、自立に資する就労支援があります。
 本区には、残念ながら、現在、特色のあるお土産がありません。そこで、渋谷らしいシンボリックな「渋谷みやげ」を作り、これを障害者の就労支援の一環として、福祉作業所等の新製品の開発と販売促進に結び付けたいと考えています。
 すでに昨年から、区内の障害者施設とデザイン専門学校生による製品開発を開始し、3Dプリンタ等を活用した渋谷ならではのアイデアが生まれています。新年度は、引き続きアイデアを募集し、良いものを商品化につなげ、区内の企業やNPO団体と連携して販売促進を図ってまいります。
 福祉が秘める創造力を具体化し実践していくことで、これまで多くの人が抱いてきた福祉という概念に対するイメージを変えていきたいと思います。

五 東京二〇二〇(にいぜろにいぜろ)オリンピック・パラリンピック大会まで三年余となりました。
(一)本区は、これまで、競技の普及啓発と気運醸成を図るため、ウィルチェアラグビーなどの競技を支援するほか、多くの来街者を迎えるため、商店会連合会の協力を得て、「障害者サポート」・「英会話サポート」等の講座を開催しているところです。
 今後は、区内競技種目を区スポーツ施設で間近に観戦する機会をつくり、その迫力や魅力・選手の躍動感を直接体験していただき、さらに関心を高めるとともに、「おもてなし事業」についても、講座の種類や対象を拡充してまいります。
 また、東京二〇二〇(にいぜろにいぜろ)大会は、区民のスポーツ機運を高める絶好の機会であり、今後、スポーツを日常生活に定着させるための目標値や方策を検討し、スポーツ推進計画を策定します。
 加えて、区内関係団体や大学と連携してボランティア育成を進めるとともに、渋谷スポーツサポーター事業を拡充させ、大会後には、本区のレガシーとしてボランティア文化を根付かせることを目指したいと思います。
(二)合わせて、大会に向け、ハードの面からも準備を進めてまいります。

  1. まず、公共交通機関としての電車やバス路線網の補完として、環境への負荷が少なく、健康増進効果も期待できる自転車を活用することです。近隣先行実施区と自転車やサイクルポートを相互利用できるよう、平成二十九年度からコミュニティサイクル事業を導入いたします。
  2. 二点目として、区内競技会場となる新国立競技場、東京体育館、代々木第一・第二体育館の周辺の道路整備を重点的に実施し、誰もが安全・安心・快適に通行できる環境にすることです。自転車走行空間の整備、電線共同溝整備による無電柱化(電線地中化)、歩道のバリアフリー化、遮熱性舗装など環境対策型舗装の整備に取り組みたいと思います。
  3. 三点目として、国内外からの来街者が、より快適に観光を楽しめるよう、観光Wi-Fi環境の整備を行います。渋谷・原宿駅周辺を皮切りに、民間事業者の設置状況などを見据えながら、順次、設置エリアを拡充していきたいと思います。そして、災害時には、防災用ポータルへ切り替えられる仕様とし、有効な情報発信のツールとしても利活用を図ってまいります。

東京二〇二〇(にいぜろにいぜろ)大会の成功、そして、大会終了後のレガシーとなるよう、これまでにいただいた議員視察団からのご報告・ご提言や職員視察の結果も踏まえ、準備を進めてまいります。

六 次に、安全・安心についてです。
 東日本大震災、熊本地震など大きな災害が続く中、日頃の備えの大切さを改めて認識するところです。昨年十二月二十二日には、新潟県糸魚川市で、約四万平方メートル、百五十軒近くの建物が焼ける大規模な火災がありました。消防による懸命な消火活動と、行政がいち早く避難を呼びかけたこともあり、死者がでなかったことは、不幸中の幸いでした。被災された方には、心よりお見舞い申し上げます。
(一)木造建築物が密集している地域の火災は、特に延焼しやすく、被害が甚大になります。本区では、本町地区の木造密集地域の不燃化を促進するため、道路や公園の整備、建築物の建替促進事業を行っていますが、大規模地震時の火災原因は、「通電火災」によるものが多く、大きな課題となっています。発災時の「通電火災」による延焼を防ぐため、本町地区の「不燃化特区」の指定を受けた地域で、新たに「木造建築物にかかる感震ブレーカー整備事業」を実施し、機器を無償配付いたします。
 また、避難所での生活は、長期化すると、体力的にも精神的にも疲労・消耗するため、プライバシーへの配慮が不可欠です。
 そこで、現在備蓄している「避難所ボード」に代えて、誰もが容易に設置でき、より高いプライバシーが確保できる「ワンタッチ式のパーテーション」を、五か年計画で全避難所に配備してまいります。
(二)巨大ターミナル駅と多くの来街者を抱える本区にあっては、発災時の帰宅困難者対策が重要です。
 この二月七日に実施した東京都・渋谷区合同の「帰宅困難者対策訓練」では、渋谷駅周辺で帰宅困難者が多数発生すると想定し、駅周辺での混乱防止のために、「一時退避場所」や「帰宅困難者支援(受入)施設」への誘導、「外国人への対応」などを確認しました。この訓練で検証された内容や課題については、「渋谷駅周辺地域 都市再生安全確保計画」に反映し、さらなる充実を図るとともに、新たに原宿駅周辺でも対応できるよう、「(仮称)原宿駅周辺帰宅困難者対策協議会」の設立に取り組んでまいります。
 また、防災機能とまちの景観形成とを兼ね備えた新たな試みとして、「シブヤ・アロープロジェクト」を立ち上げたいと思います。これは、「矢印・モニュメント」を複数か所設置し、災害時には、帰宅困難者支援(受入)施設が開設されるまでの間、外国人を含む来街者を、安全に留まれる場所である「一時退避場所」に誘導する案内サインとなるもので、実行委員会方式で実施します。
(三)国内外から多くの人々が集まる本区にとって、区民や来街者の安全・安心の確保は重要な課題です。区民の安全な暮らしを守るとともに、来街者が渋谷の街を安心して訪れることができるように、防犯面での取り組みを強化することが必要です。
 区内の犯罪発生件数は年々減少傾向にあるものの、不審者情報なども寄せられていることから、犯罪を未然に防止するとともに、犯罪の早期解決を図ることにより、子どもたちの安全を確保するため、区立小学校全十八校の通学路に、一校あたり五台の防犯カメラを設置します。
 また、これまでの録画による事後対応にとどまらず、現場で直ちに対応可能なライブ方式の防犯カメラについて、区立公園等で効果を検証し、さらに渋谷を安全・安心で魅力あるまちにしてまいります。
(四)東京二〇二〇(にいぜろにいぜろ)オリンピック・パラリンピック大会を控え、また、受動喫煙による健康被害のリスク等への関心が高まる中、国においては、公共の場所における喫煙のあり方に対する法的規制について、検討が進められています。
 本区では、「歩行喫煙はしない」「たばこは決められた場所で吸う」という『渋谷区分煙ルール』を平成十五年八月に定め、喫煙所や灰皿のある場所以外での喫煙を禁止していますが、このような動向を踏まえ、非喫煙者の健康を守る視点に立って、さらに喫煙者のモラルやマナーの向上を啓発していく必要があります。
 そこで、『渋谷区分煙ルール』の実効性を高め、快適な生活環境の整備を進めるため、警察官OBを「分煙対策指導員」として配置し、区内の主要駅を中心に、マナー違反者に対する指導や喫煙所への誘導など分煙対策を強化してまいります。

七 次に、コミュニティとまちづくりについてです。
(一)安全・安心なまちづくりの土台となるのは、地域の力です。ちがいを超えて、人々がつながるダイバーシティを実現するには、渋谷を愛する全ての人々が、渋谷の未来に向け、力を合わせていくことが必要です。
 そこで、地域活性化のための条例を制定し、地域コミュニティの存在意義を明確化するため、本定例会に条例案を提出しております。ご議決後は、本条例に基づき、町会等の活動へ財政的支援を行うほか、地域活動への参加に役立てていただくため、定年退職世代の方を対象に地域デビューマップを作成・配付いたします。
 また、具体的なコミュニティ活性化策として私が議員時代に紹介・提案した隣人祭りを渋谷版隣人祭り「おとなりサンデー」として実施し、地域の人々のつながりを強め、次世代の地域人材を発掘していきたいと思います。
(二)本区では、これまでも区民、企業等が相互に連携してまちづくりを進める「協働型のまちづくり」を目指し、地区計画が十八地域、認定まちづくり協議会が五団体設立されるなど、一定の成果を上げてきました。
 私は、さらに一歩進め、基本構想でお示しした考え方を、このまちづくりにも大胆に取り入れていきたいと考えています。
 渋谷は、個性豊かな「まち」の集合体です。
 多くのインバウンドを呼び込む渋谷駅の周辺は、坂路やストリートカルチャーが醸し出す渋谷特有の景観を大切な宝物ととらえ、今以上に強烈な個性を持ち、文化を生み続ける街に発展させる必要があります。
 一方、笹塚・幡ヶ谷など、地元の皆さんが作り上げた「下町文化」や玉川上水など地域の資源に少し工夫を凝らすことで、日本ならではの風情あふれるまちを海外の多くの人々にも体験してもらうことができると感じています。
 そのために、渋谷に住む人はもちろん、渋谷で働く人、学ぶ人、訪れる人など、渋谷に集う多様な人々のアイデアやノウハウを集め、オープンイノベーションを起こすことで、今までにない発想とパワーでまちづくりを進める「渋谷モデル」を構築していきます。
 この「渋谷モデル」を実現する場として、「渋谷未来デザイン会議(仮称)」の平成三十年度設立に向け、二十九年度も引き続き「かもづくりフューチャーセッション」、「渋谷をつなげる30人」などのワークショップを行い、人材育成や産官学民の連携を深めていきます。
 また、現行の都市計画マスタープランの計画期間が平成三十二年までとなっているため、二十九年度から三か年をかけ、都市計画マスタープランを包含した「まちづくりマスタープラン」を策定いたします。

八 次に、持続可能な行財政運営についてです。
 平成二十九年度当初予算案は、基本構想の理念「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」の具現化を力強く進め、より良い未来の渋谷を創造する施策を展開するため、これまでで最大規模の予算となっています。
 しかし、渋谷区の未来像を実現するには、持続可能な行財政運営が不可欠であることは言うまでもありません。
 そのため、財政規律の維持に留意し、財源確保に必要な措置を講じていますが、区民の期待に応えていく上で何よりも重要なことは、行政の質そのものを高めていくことだと考えています。
 この点に関し、特に二点について、触れたいと思います。
(一)一つは、区ウェブサイト(ホームページ)のリニューアルについてです。
 区長就任以来、私は、「オウンドメディアの強化」を推進し、情報発信力の強化と双方向性のコミュニケーション基盤の実現に取り組んできました。
 その具体的な成果として、昨年から区ニュースを刷新するとともに全戸配布を実施したほか、コミュニティFMを活用した区民参加型の広報番組の放送を開始しました。また、区ウェブサイトについても、あらゆる人が使いやすく、必要な情報を素早く入手できるよう、この二月には、モバイルファーストのデザインを採用し、検索機能も強化する等のリニューアルを行ったところです。
 二十九年度は、区ウェブサイトのリニューアルをさらに進め、全ページにわたる見直しを行い、ユーザーガイドやコンテンツを充実させる等、区民の利便性の一層の向上を図ります。
 また、この二月から、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)を使用し、予防接種等の情報の提供を始めていますが、今後は、このSNSの特性を活用し、区民一人ひとりに対して、最適なコミュニケーション基盤を構築するなど、区民のニーズに応じた情報提供の仕組みを確立していきます。
(二)もう一点は、ICT基盤の整備です。
 行政サービスの多様化に伴い、窓口での手続き等も複雑化・煩雑化しています。対応の迅速化とともに、手続きの簡易化を図るには、窓口機能の拡充や電子申請手続きの推進など、ICTの利活用が不可欠です。
 そこで、新庁舎移転を契機に、現在の堅牢でセキュリティの高い機能を堅持しつつ、区の情報システムやネットワークなどのICT基盤を刷新し、区民の利便性の向上と行政コストの低減を図ってまいります。
 また、集積した様々な情報を分析し、政策の立案等に活用するとともに、職員のワークスタイルを変革し、働きやすさと生産性を高め、さらに行政サービスの質の向上を実現します。

九 最後に、財政規模について申し上げます。
 平成二十九年度一般会計歳入歳出予算額は九百二十六億五千二百万円であり、前年度に対して九・六%の増となっております。これは、これまで申し上げたとおり、子育て支援をはじめ、高齢化への対応、災害対策の強化等、区民福祉に係る諸施策の充実や活力に満ちたまちづくりを進めるなど、渋谷区基本構想の実現に必要なものです。
 これに国民健康保険事業会計等の三特別会計、四百九十五億六千七百二十八万三千円を加えました各会計の合計額は、千四百二十二億千九百二十八万三千円で、前年度に対して六・九%の増となっています。
 本定例会には、ただいま申し上げました予算案等を含め、条例案十六件、平成二十八年度補正予算案二件、平成二十九年度当初予算案四件、人権擁護委員の諮問二件をご提案しております。
 よろしくご審議のほどお願い申し上げます。
 YOU MAKE SHIBUYA(夢行く渋谷)
 一人ひとりが渋谷のまちづくりの主役です。一緒に未来の渋谷、ロンドン、パリ、ニューヨークと並ぶダイバーシティ&インクルージョンのまちを創っていきましょう。もちろん、私も先頭に立って汗をかきます。
 以上をもちまして、私の所信表明といたします。
 ありがとうございました。