ちがいをちからに変える街。渋谷区

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平成28年第3回区議会定例会での発言

更新日

2016年9月29日

(9月29日(木曜日)、第3回区議会定例会本会議で述べた長谷部健区長の発言を掲載します。)

本日ここに平成二十八年第三回渋谷区議会定例会を招集し、提出議案についてご審議をお願いすることとなりました。
この機会に、当面する区政の課題についてご説明申し上げ、区議会及び区民の皆様のご理解とご協力を賜りたいと思います。


(一)九月十八日、過去最大となる159か国・地域から約4300人の選手が参加した第十五回夏季パラリンピックが閉幕しました。
 史上最高と評価されたロンドン大会に続き、リオデジャネイロ大会での成功は、障害者にとどまらず、マイノリティに光を当て、マジョリティの意識を確実に変えたと思います。わが国でも、連日、各種メディアが、選手はもちろん、競技の解説や選手を支える多くの人たちを幅広く取り上げ、紹介するなど、前回の一九六四年東京大会当時からは、大きな変化が見られました。この半世紀は、まさに人々の心が開かれていった軌跡でもあると言えます。
 数々の感動と勇気を与えてくれた選手の皆さん、それを支えられてきた全ての人々に、改めて敬意を表し、感謝します。
(二)二〇二〇年東京大会では、区内競技会場でウィルチェアーラクビー、パラ・バドミントン、パラ卓球の三種目が実施されます。
 今回、リオデジャネイロ大会開催の機会をとらえ、区議会では、リオデジャネイロ・パラリンピックの運営等の調査のため、伊藤毅志議員を団長とする区議会議員三名、職員二名を派遣し、非常に厳しい日程の中、精力的にご視察され、その調査結果は、全員協議会において報告されると聞いております。ここに敬意を表しますとともに、その成果に期待するところです。
 行政におきましても、関係部署の職員を現地に派遣し、視察させています。
 ロンドンでは、ウィルチェアーラグビーなどを開催した自治体ニューハム地区を訪問し、子どもたちへのオリンピック教育やスポーツ・文化振興のアプローチの仕方などを学ぶ一方、スポーツ施設で健常者も障害者も交じりあい健康づくりをしている様子に、「日本とはまだまだ意識の違いが大きいことを実感した」との報告を受けました。
 また、リオデジャネイロでは、ウィルチェアーラクビーとパラ卓球を視察し、「現地ボランティアのおもてなしの心を感じる大会運営や、競技会場での熱気を直接肌で知ることができた。区で壮行会を行ったウィルチェアーラグビー代表チームの健闘も素晴らしかった」とのことでした。皆様もご承知のとおり、この代表チームは、史上初となる銅メダルを獲得しましたが、とても喜ばしいことであり、区としても誇りとなるものです。
 大会の運営やサポート体制のあり方、さらには大会後のレガシーの構築等、成果については、報告書にまとめるとともに、広く区民と共有できるようにしたいと考えています。そして、区議会の調査結果も合わせ、本区においてこれらの経験を活かし、二〇二〇年東京大会の成功につなげるとともに、ここ渋谷から、人種や性別、障害の有無などにとらわれない多様性を大切にする「ダイバーシティ・インクルージョン」社会に向けた意識改革を実現したいと思います。

二 「渋谷区基本構想」についてです。
(一)現在の基本構想の策定から二十年が経過し、この間、人口構造の変動、渋谷駅周辺の整備や東京オリンピック・パラリンピック開催を契機とした国際化の進展等、区政を取り巻く環境は大きく変化しています。また、本格的な少子高齢社会・人口減少社会の到来を迎え、子ども・子育て支援新制度が導入されるとともに、医療・介護費用の増加、一人暮らし高齢者の増加や認知症への対応などの課題が生じています。さらには、ICTの発展に伴い、スマートフォンやインターネットなど情報インフラが急速に普及する一方、長年にわたる経済の低迷等により、格差の問題が浮かび上がるなど、社会は常に新たなニーズと課題を生みながら、変わり続けています。
 そこで、このような加速度的に変化していく社会に適切に対応できるよう、本区の新たな未来像を描くとともに、今後の区政の基本的方向を検討していただくため、昨年十一月に公募委員六人を含む二十人の委員からなる渋谷区基本構想等審議会を設置し、この八月三十日に答申をいただきました。
 この間、審議会九回、小委員会三回、さらに二つの専門部会で精力的に検討が重ねられるとともに、区民説明会やパブリックコメントを実施し、直接区民からいただいた多くのご意見が答申に反映されています。これまでの渋谷の歴史や伝統を踏まえながら、まさに渋谷という地域特性を活かした、渋谷区にしか作ることのできない内容になったと感じています。
 市川会長をはじめ、審議会委員の皆様には、改めて心より感謝を申し上げます。
(二)この基本構想案の内容ですが、まず、渋谷区の未来像を語る新たなフレーズとして、「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」という言葉を掲げました。
 私は、以前から申し上げておりますように、渋谷区をロンドン・パリ・ニューヨークと並ぶ、世界に誇れるような魅力あふれる成熟した国際都市にしたいと考えています。そのためには、「ダイバーシティとインクルージョン」の考え方をさらに普及・推進し、区民や渋谷区に関わる多くの人々の意識を変えていくことが重要だと考えています。人々が持つ「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」というこの言葉は、その実現に向けた力強い象徴になると信じています。
 また、基本構想案では、政策分野別にカテゴリを七つに分け、それぞれの分野での未来の姿をわかりやすく表現しています。
 例えば、A「子育て・教育・生涯学習」の分野では、「それぞれの成長を、一生よろこべる街へ。」とし、あらゆる人が、「育つ人」であると同時に「育てる人」になり得ることから、すべての人が育つことと育てること、教わることと教えること、それぞれの喜びを感じられるようにすることを目指します。
 また、B「福祉」の分野では、「あらゆる人が、自分らしく生きられる街へ。」とし、どんな人をも社会から孤立させず、すべての人々が支え合い、どんな人でも自分らしく生きていける共生の街を目指します。
 同様に、C「健康・スポーツ」の分野では、「思わず身体を動かしたくなる街へ。」、
 D「防災・安全・環境・エネルギー」の分野では、「人のつながりと意識が未来を守る街へ。」、
 E「空間とコミュニティのデザイン」の分野では、「愛せる場所と仲間を、誰もがもてる街へ。」、
 F「文化・エンタテイメント」の分野では、「あらたな文化を生みつづける街へ。」、
 G「産業振興」の分野では、「ビジネスの冒険に満ちた街へ。」としています。
 これらのスローガンやビジョンは、渋谷区のこれから先の「あるべき姿」を示すものとして、夢と希望に満ちた明るい未来の創造に向け、大いに期待していただけるものになっていると考えます。
(三)この基本構想案は、子どもからお年寄りまで、区民が生き生きと安心して暮らし続けられるまちづくりを進める上で、今後の区政運営の礎(いしずえ)となるものです。
 また、区民と渋谷区に関わる多くの人々や企業・NPO・ボランティアなどはもとより、国内外からの渋谷を愛する全ての人々が支え合い、混ざり合って、渋谷の新たな価値を創造し、渋谷区が成熟した国際都市として成長し続けるための原動力となるものです。
 本区では、既にご報告しているとおり、区政の課題を解決していくための手法の一つとして、地域貢献したいという区内民間企業や大学等とS|SAP(シブヤ・ソーシャル・アクション・パートナーシップ)協定を締結し、それぞれが得意とする分野での強みを活かす取り組みを進めていますが、こうした行政と民間との協働は、今後、さらに重要性を増していくと考えています。
 このようなことから、区議会のご議決後、新基本構想として、広く区民へ周知を図りご理解をいただくとともに、渋谷区で学ぶ人、働く人、遊びに来る人、さらには世界に向けて、これからの新たな渋谷区を印象付けるメッセージとして積極的に発信していきたいと思います。
 また、単なる理想ではなく、着実に実現していくために、同時に答申をいただいた長期基本計画に盛り込むべき施策の体系を踏まえ、今後十年間の施策の方向性を定める「長期基本計画」を策定してまいります。
 あわせて、持続可能な行財政運営を確保できるよう、時代の変化に即応できる行政サービスを提供するための新しい働き方や新庁舎のあり方、区の組織のあり方についても検討を進めます。

三 次に、区議会と連携し、全庁を挙げて取り組んでいる「子育て支援」についてです。
(一)まず、喫緊課題の一つである待機児童解消に向けた保育施設の確保・整備です。
 十月には鶯谷町に認可保育園「ほっぺるランド渋谷」が開設されますが、さらに来年四月の開設に向けて、現在、上原地区で認定こども園一施設、氷川地区・初台地区・上原地区で事業者提案による認可保育園三施設の整備を支援しているところです。
 今回、新たに本町地区において、来年四月に開設できるよう、本定例会に、事業者提案による認可保育園の整備費等を補正予算として計上しました。今後は、これらに加え、既存の保育施設の改修等による定員拡大も合わせ行うなど、引き続き様々な手法を活用し、前定例会で申し上げた「平成二十九年度から三年間で千四百人規模の定員拡大」を実現してまいります。
(二)本区では、これまでも保育施設の量的拡大とともに、良質な保育環境の確保に努めてまいりました。
 良質な保育・教育の提供の基(もと)になるのは、言うまでもなく、質の高い人材の確保にあります。しかし、近年の都市部を中心とする全国的な保育需要の高まりに対する急激な施設整備の拡大は、それを支える保育人材の不足をもたらし、他自治体ではこれに起因する施設定員の縮小や開園時期の遅延などの話も聞くようになっています。
 そのため、保育人材を確保し、その定着及び離職防止を図るための緊急対策として、新たに宿舎の借り上げ費用の一部を補助する「保育従事職員宿舎借り上げ支援事業」を実施することとし、必要な経費について、補正予算として計上しました。
 本事業では、国や東京都の補助制度を活用するとともに、より実効性の高い制度となるよう、区独自の対策として、1.借り上げ費用や礼金に対する補助単価を上乗せするほか、2.転居に要する費用についても助成することとします。さらに、3.中堅保育士確保の観点から、国の補助制度の対象となっていない採用後六年目以降の職員も加えます。一方、4.これら支援策の対象を宿舎が区内にある場合に限定することで、保育従事職員の区内居住を促進し、閉園時の発災等、緊急事態にも迅速に対応できる体制の構築につなげ、民間保育施設における安全・安心かつ良質な保育の提供に資するものとしてまいります。
(三)これらスピード感をもった待機児童対策と同時に、様々な保育・教育ニーズに対応したサービスの充実を図ることも欠かせません。
 その取組みの一つとして、このたびご寄贈いただいた土地を活用し、区内では初めてとなる小児科を併設した「病児保育施設」を初台地区に整備したいと思います。これにより、これまで感冒等の疾病で集団保育が困難とされ、保育園に預けることができなかった児童も、安全・安心に保育ができることになります。あわせて、従来の保育園では困難であった医療的ケアの必要な児童に対する「障害児保育」についても実施できればと考えています。
 一方、区立幼稚園では、幼稚園教育と連続して園児一人ひとりに対応した教育・保育活動を行うことにより、園児の健やかな成長を図るとともに、子育て世代の就労支援ともなるよう、平成二十六年十月から本町幼稚園で、平成二十七年四月からは臨川幼稚園で、それぞれ「預かり保育」を実施してまいりました。
 その実績を踏まえ、来年四月から広尾幼稚園を加え、区立幼稚園全園で預かり保育を実施することとし、本定例会に条例改正案を提出しております。
 これらにより、区民の多様な子育て支援ニーズに応えるための選択肢が充実するものと考えています。

四 以上、当面の課題について申し上げましたが、本定例会には、条例案三件、平成二十八年度一般会計補正予算案一件、平成二十七年度一般会計歳入歳出決算等四会計の決算審査、道路認定二件、その他議決事項二件、人事案件一件、報告案件六件をご提案しております。
 よろしくご審議のほどお願い申し上げます。