ちがいをちからに変える街。渋谷区

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「まぜこぜ一座(いちざ)」を通して、気付きや感動を届けたい。

令和6年(2024年)4月15日号

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多様で個性的な表現者が集まる「まぜこぜ一座」を設立した俳優・東ちづるさんと、ドラァグクイーンのドリアン・ロロブリジーダさんにお話を伺いました。

東ちづるさん「私たちの活動を通して、「まぜこぜの社会」の豊かさを多くの方々に届けていきたいです。」
俳優、一般社団法人Get in touch代表 東(あずま)ちづるさん

会社員生活を経て、ドラマや映画、情報番組、講演、出版など幅広く活躍。
プライベートでは日本骨髄バンクやドイツ国際平和村、障がい者アートなどのボランティアを30年以上続けている。

ドリアン・ロロブリジーダさん「自分の気持ちを大切にしながら、個性あふれる表現者たちと一緒に活動できることが幸せです。」
ドラァグクイーン ドリアン・ロロブリジーダさん

昭和59(1984)年生まれ。東京都出身。平成18(2006)年にドラァグクイーンとしてデビュー。
各種イベントへの出演やMC、モデル業、映画や舞台、CM出演など活動は多岐にわたる。

障がいの有無をまぜこぜにしたプロの表現者集団

お二人の活動内容について教えてください。

東:本業は俳優とタレント業です。一般社団法人Get in touch(ゲット イン タッチ)の代表も務めています。Get in touchでは、アート、音楽、映像、舞台などのエンターテインメントを通じて、人や団体、企業や行政などをつなぎ、誰も排除しない「まぜこぜの社会」を目指して活動しています。
ドリアン:私はステージでショーを披露したり、テレビ、ラジオ、映画などに出演したりしながら、世界に愛と笑顔をお届けしています。ドラァグクイーン(注1)との出会いは、高校3年生の時でした。お化粧を勉強したり、衣装を買ったりして、お客さまの前でパフォーマンスすることを始めたのが21歳の時です。それがとても楽しくて、今でも続けています。

(注1) きらびやかなメイクや派手な衣装に身を包み、強い女性性をまとってパフォーマンスを披露する男性のこと。由来は諸説あり、一説によると長いドレスやガウンを引きずる様子(drag)が語源とされている。

「まぜこぜの社会」とは、どのようなイメージでしょうか。

東:たとえば、まぜご飯をイメージしてみてください。錦糸卵、塩ゆでのエビや絹さや、シイタケの甘煮など、食材の特性を生かして下ごしらえした具材を混ぜ合わせることでおいしくなりますよね。同じように、マイノリティーの特性に配慮する社会になれば、みんなが幸せになれるという意味が、「まぜこぜの社会」に込められています。活動の一つに、性の多様性が尊重される社会の実現を目指すための映画を制作・上映したり、学校の授業で活用できるDVDを無料配布したりしています。

「まぜこぜ一座」を結成した経緯について教えてください。

東:Get in touchの活動には、多様な特性のあるマイノリティーの表現者がたくさん参加しています。それぞれの得意分野を生かして舞台やファッションショーなどを開催していたところ、ある人から「毎回素晴らしいイベントですね。皆さんが一堂に会したら世界的なニュースになりますよ」と言われたことがありました。全盲のシンガーソングライター、義足や車いすのダンサー、ドラァグクイーンなどのキャストたちが特性を生かして舞台に立てば、観客の皆さんに「まぜこぜの社会」を体感していただける。さらには多くの人たちやメディアの注目を集めることができるかもしれない。そう考えて「まぜこぜ一座」を結成しました。

理解し合うことはできなくても、排除しないことが大切

令和5年(2023年)3月には「まぜこぜ一座」の『歌雪姫と七人のこびとーず』が上演されました。印象に残っている出来事やエピソードがあればお聞かせください。

東:台本を作る時は毎回、マイノリティーの皆さんの表現や笑いの取り方などをたくさん勉強しなければいけません。表現者たちの特性を生かしつつ、お客さまに気付きや感動を受け取ってもらうためにはどうするべきか、常に葛藤しています。
ドリアン:本作品は、私にとって4度目の「まぜこぜ一座」での出演となりました。期間中は昼と夜の上演があり、たくさんのシーンに登場させていただいたこともあって、朝から晩まで常に着替えては演じての繰り返しで、過呼吸になるほど忙しかったです。作中に、インターネットやSNS上で中傷やうわさ話が広がっていくシーンがあるのですが、これは今の社会においても深刻なテーマだと思います。悪意のある言葉や、悪意がなくても誰かを傷つけてしまう言葉が数を重ねていくことで、人生や人の命までをも脅かしてしまう。そのような世界を私は望んでいません。エンターテインメントを通じて、このような現状に問題提起ができればと思いました。

舞台を通じて、どのような変化や気付きがありましたか。

ドリアン:世の中にこんなに素晴らしい表現者、演者がたくさんいることに衝撃を受けました。障がいの有無にかかわらず、素晴らしいパフォーマンスを披露するキャストたちの姿を見ると、「私も負けていられない!」と奮い立ちます。表現者同士のプライドのぶつかり合いが、とても刺激になりますね。ほかにも、私は人と接する時にその人を肩書で見ることが少なくなりました。たとえば、以前は「ダウン症の人に対しては、当然こうしなければならない」と考えていましたが、今では「自分も相手も同じ一人の人間なのだから、人と人として向き合えばいいんだ」と思うようになりましたね。
東:「MAZEKOZE(マゼコゼ)アイランドツアー」(注2)の映像を作った時、実はカメラマンや照明、音声などのスタッフたちが一番戸惑っていたんです。手足に障がいのあるキャスト、聴覚や視覚に障がいのあるキャスト、あるいはダウン症や自閉症のキャストたちと関わることが初めてだったからです。最初は「義足を外した生足を撮っていいのですか」「自閉症の人に普通に話し掛けてもいいですか」などと私に尋ねていました。でも、制作期間を一緒に過ごすうちに、お互いへの信頼関係が生まれてきたそうなんです。その後、スタッフたちは「街中で障がいのある人とお会いすると、何か困っていないかなと、普通に接することができるようになりました」と話していました。理解や知識よりも、一緒にいることで遠慮より配慮が大事だと気付いたのだと思います。

(注2) 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の公式文化プログラム「東京2020 NIPPONフェスティバル」の一環として、「共生社会の実現に向けて」をテーマに製作された配信映像。東さんが企画、構成、キャスティング、演出、衣装、総指揮を担当。

渋谷区は「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」を基本構想の未来像として掲げています。お互いの「ちがい」を認め合ったり、考え方や価値観を尊重したりするために、普段から心掛けていることはありますか。

東:認め合うことや理解し合うことは、夫婦や親子でも難しいことだと思います。私たちはそれぞれ全く異なる環境で生きてきた人間だからです。どうしても相性が合わない人にも出会うことがありますが、無理をしてまで仲良くしなくてもいいと思います。ただ、排除しないことが大切です。一緒にいるだけでいいんですよね。

渋谷区が変われば、東京都が変わり、日本が変わる

今後、舞台などの表現活動を通してチャレンジしてみたいことはありますか。

東:「まぜこぜ一座」を東京都以外の地域で上演することです。海外でも上演したいですね。海外で評価をいただければ、日本にも大きな影響を与えることができるかもしれません。ゆくゆくは、「まぜこぜ一座」のような取り組みが必要ではなくなり、マイノリティーの表現者たちがテレビ番組などで活躍できるような社会になるといいなと思います。施しではなく、チャンスが大事だと考えています。
ドリアン:ドラァグクイーンとして、いつかミュージカルに挑戦したいです。自分の可能性を自分で決めてしまったらもったいないですから、欲張っていろいろなことをやってみたいですね。

6月16日に上映される映画『まつりのあとのあとのまつり〜まぜこぜ一座殺人事件〜』と、パフォーマンス公演の見どころについて教えてください。

東:今回の作品は、昨年上演した「まぜこぜ一座」の『歌雪姫と七人のこびとーず』の続編で、なんと座長である私が殺されてしまうんです。犯人はなぜ、このような事件を起こしたのか。そこを面白おかしく描いた社会派コメディーサスペンス映画です。90分間の映画上映と歌やダンスのパフォーマンスをお届けします。ご期待ください!

最後に、区民の皆さんに向けてメッセージをお願いします。

ドリアン:マイノリティーの人たちが生きやすい社会を目指したり、社会を変えていくために働き掛けたりすることは、自分の人生をしっかりと立脚した上で取り組まなければ持続させることはできません。まずは自分自身が幸せになることを最優先にしていただいて、そこから周囲の人たちに、愛や優しさを広げていくことが大切だと思います。皆さん、それぞれ幸せになりましょうね。
東:渋谷区が変われば、東京都が変わる。東京都が変われば、日本が変わると思っています。でも、どのように動けばいいか分からないという人は多いのではないでしょうか。渋谷区民の皆さんには特製の手拭いをプレゼントさせていただく特典もありますので、まずは6月16日のイベントにいらっしゃって、「まぜこぜの社会」を体感してください。ぜひ、この機会に私たちとつながっていただければと思います。社会は必ず変わります。

「渋谷のラジオ」で放送中!


東さん、ドリアンさんへのインタビューは4月16日・23日・30日に「渋谷の星」で放送します。
渋谷のラジオ 87.6MHz(外部サイト)

『まつりのあとのあとのまつり〜まぜこぜ一座殺人事件〜』公演情報

社会派コメディーサスペンス映画『まつりのあとのあとのまつり〜まぜこぜ一座殺人事件〜』の上映と、歌とダンスのパフォーマンス公演。会場ロビーでは写真展とGet in touch展を開催します。
日時: 6月16日(日曜日)17時映画上映開始(16時開場)
場所:LINE CUBE SHIBUYA(宇田川町1-1)
定員:1階 1,062席、2階 412席(合計 1,474席)
料金:1階席 6,000円、2階席 5,000円
(子ども、障がい者、同行介助者は半額料金)
申し込み:デジタルチケット販売サイト 「LivePocket -Ticket-」(外部サイト)

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