ここは対価を払いサービスを受ける店ではないし、税金で運営される公共施設でもない。生涯学習、福祉などに取り組む民間団体がかかわり、それぞれの活動が重なり合う、地域の拠点である。笹塚十号のいえを主宰するのは、一般社団法人TEN-SHIPアソシエーション代表理事の戸所信貴さんだ。だれもが入って過ごせる場所をつくったいきさつを聞いた。戸所さんは2007年から12年間、地域包括支援センターに勤めていた。そこは生活上の困難を抱える人たちと行政サービスをつなぐ窓口だが、まずは相談に来てもらわないことには対応ができない。さらにそうした人たちの課題は複合的で、部門で窓口が分かれる行政だけでは支援が行き届かない。もっと日常的に地域や住民同士が接点を持ち続けることで、個人や家庭の困りごとや小さな変化に気がつくような関係づくりが必要だと感じていた。2015年には、仲間と共に月1回、コミュニティカフェ「ささはたカフェ」をはじめた。商店街や民生委員、大学、福祉事業所、ボランティアセンターの人たち10人ほどで運営委員会を立ち上げ、三つの商店街の事務所を順番で借り、だれでも立ち寄れるお茶飲み場を開いてきた。カフェを続けながら、2019年には思い切って地域包括支援センターを退職。地域の人たちの商店街にベンチがたくさんあったなら十号通り商店街にあるオープンスペース「笹塚十号のいえ」。元八百屋の場所を活用している一般社団法人TEN-SHIPアソシエーション理事の戸所信貴(とどころ・のぶたか)さん7
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