渋カツナビ2025
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テープを張り巡らせて、蜘蛛の巣状態にして遊んだりして。その子は「秘密基地」と言っていましたね。その親子がスタートになり、友だちやママ友を「おもしろい場所があるぞ」と誘ってくれたので、口コミで広がり、利用者が増えていきました。いまやその子は中学生です。編集部「ぼくの秘密基地」が「ぼくらの秘密基地」になっていったんですね。中原さんはフリースクール「みんなのプロジェクト学校」(以下「みんプロ」)をされていますが、これもおもしろい活動ですね。はじめたきっかけを教えていただけますか。中原私はもともと保育士だったんですが、出産を機に退職しました。その息子が小学2年生の時に学校に行けなくなって……。お友だちも好きだし、勉強もおもしろいと言うのに学校に通えない。どこか学校以外に通えるところを探していたんですけれど、当時、小学校低学年を受け入れてくれるフリースクールって本当に少なかったんです。手探り状態だったんですが、小学校3年生の冬、ウクライナ戦争のニュースを一緒に見ていた時、キャスターの方が「今年は戦争の影響で、クリスマスプレゼントをもらえない子がたくさんいるでしょう」と言ったんです。息子はそれに衝撃を受けて黙り込んだ。数日後、「自分がサンタさんにもらえる分のクリスマスプレゼントをだれかに寄付したい」と言ったんです。それで一緒に渋谷区の乳児院にプレゼントを届けに行ったら、子どもたちも職員の方もとても喜んくださって、息子に感謝してくれたんですね。息子は恥ずかしそうだけどとてもうれしそうでした。息子は、学校に行けない自分を自分でいちばん責めていました。家族以外に自分の存在を受け入れられたことがものすごくうれしかったんだと思います。帰り道に、「今年はサンタさんの力を借りたけど、来年は自分でお金を稼いでもっと大きいものを届けたい。そのためのプロジェクトチームをお友だちとつくりたい」と目をキラキラさせて話してくれた。私はそれを聞いて「そんなフリースクールがあったらいいな」と思い、「ないなら自分でつくっちゃおう」と考えたんです。それで、不登校のお友だち3人でそれぞれやりたいことを持ち寄って、みんなで一緒に楽しく過ごそうとしたのが、はじまりです。 編集部いう意味ですね。中原しい。家族だけじゃなく少し広げて、半径5mにいる近くの人と楽しく過ごせたら、だんだん広がっていくんじゃないかなと思って「R5m」とつけました。最初の活動は、「犬の散歩を1回500円でやります」と地域にビラをまいたんですけど、なにも反響はありませんでした。その後、たまたま「地域のお祭りに参加していいよ」と声をかけてもらったことが大きなきっかけになりました。団体名の「R5m」は、“半径5m”とはい。やっぱり家族だけで支えるのは難「楽しいなら出てみたいな」と、ぽろっと言ったそこで、社会人や学生の方と出会って、子どものためになにかしてあげたいと思ってくれてる人が多いんだなと気づきました。いま、フリースクールのお昼ごはんは、地域のシニアの方がつくりに来てくれていますし、プレーリーダーとして学生が入ってくれたりしています。神代それぞれの人たちにとっての「いい場所」になっているよね。先日開催した運動会もいろんな人が来ていたし。中原はい。学校に行っていない子どもたちは運動会に参加したことがないんです。でもある日んですね。私たちは普段ゆるく過ごしていますが、子どもたちがやってみたいことはキャッチして形にしていきたいと思っているので、パン食い競争やお昼ご飯ゲット競争など、楽しいことばかりを詰め込んだ運動会を企画したんです。社会人や学生にチームに入ってもらい、中学校の体育館を借りて開催したら、渋谷区の親子が100人くらい来てくれました。基本は自分が手の届く5mだけど、それ入江があちこちに広がっているんですね。中原子どもたちが自分の足で行ける範囲で、拠点がいっぱいできていったらいいなと思います。子どもの主体性が育つ空間をつくろうと入江いう目的は私たちと一緒ですね。子どもの時の自由な遊びは、ごはんを食べるのと同じくらい大切で、大人が干渉せずとにかく思いきり遊べる場が必要だと思っています。昔は、街中のみんなが子――――― ―――― 自分の足でいける距離に拠点がたくさんあれば良い20

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