そもそも、ヨーロッパの駅はものすごく変わっています。ロンドンのカナリー・ワーフという駅は、地下鉄とライトレール、クロスレールが入ってきて駅の上空を公園にしています。宮下公園と全然違います。オランダのハーグ中央駅は、もともと路面電車がありましたが、その路面電車を駅の上にあげました。駅の中は特急国際電車です。この中に路面電車が通っているんです。つまり、電車を見せることによって面白い空間を作っているんですね。パリのサンラザールという駅は、日本の駅中のビジネスを見て真似をしています。また、デンマークのコペンハーゲンは3つの路線が乗り入れています。時々ここに蒸気機関車が走っています。つまり、街から電車が見えて楽しい空間になり、それが活気のある街にも繋がる。渋谷も高速道路がありますので、自動車が見えて楽しいですよね。地下鉄も見えるようになってより楽しくなりました。このように、新たな空間づくりと既存の魅力で多様な渋谷をと考えています。― 続いて、長谷部区長。”災害にも強い街渋谷”というお話が出ましたが、「渋谷アロープロジェクト」という帰宅困難者対策について教えていただけますでしょうか?長谷部区長:東日本大震災の時、渋谷は帰宅困難者で溢れていました。災害が起きる時間帯によっては、駅に大勢の人が集まり、国道246号線も渋滞する大混乱が起きるという懸念があります。さらに、外国人観光客が増えてきている今、地震があった時にいくら日本語でアナウンスしてもどこが避難場所かは分からないですよね。一方で、渋谷のもうひとつの課題として”落書き”という大きな問題があります。であれば、このふたつの問題はアートを使って少しユニークに渋谷らしく解決できないかということを考えました。落書きがあった場所にアーティストに絵を描いてもらい、そのアートの中に必ず矢印を入れてもらって、避難所へと向かう道標としました。今までこのような壁面アートは許可が降りるまでに2ヶ月ほどかかっていましたが、区が責任を持つ形で実施できる協定を結びました。今はまだ数は少ないですが、今後さらに面白いアートが街中に増え、それによって落書きが減り、そのアートが災害時に役に立つような仕組みにしていきたいと考えています。社会課題と結びつけユニークに解決していくことが渋谷の面白さではないでしょうか。― 楽しくそして安心なまちづくりですね。続いて、石井事務所長。渋谷駅周辺の今後の展望をお伺いできますか?石井事務所長:先ほど森地教授から谷地形を克服した、歩行者ネットワークというコンセプトのご説明がありましたが、こちら再開発完成イメージパース(歩行者ネットワーク断面 参照)です。宮益坂から銀座線高架の屋根部分が歩けるようになり、駅から渋谷マークシティの方まで伸びる東西のスカイウェイが将来完成します。渋谷スクランブルスクエアと並ぶ渋谷の新しい景色として、この歩行者ネットワークが存在感を発揮してくれるのではないかと期待しています。30
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